8はじめに 糖尿病という病気はその病因、病態が多様です。そのうえ糖尿病をもつ患者さんの性格、心理的背景、社会的背景、環境要因なども多種多様・千差万別であることから、個々の患者さんに応じた適切な糖尿病の療養指導を実施するには、かぎりなく多くの情報と、臨機応変に対応するためのいくつものスキルが必要となってきます。 しかしほとんどのスタッフは、初めから十分な情報を得ているわけではなく、熟練したスキルを有しているわけでもありません。ある程度の情報とある程度のスキルで臨床現場での療養指導に臨み、失敗と成功をくり返しながら情報とスキルの経験値を上げていくことになります。そのときに「失敗と成功をどう捉えるか」「そこから情報とスキルをどのように得て、どのように自身の経験値に結びつけていくのか」には、いくつかの心構えが必要です。 そこで、まずは基礎編として「療養指導克服の心得7ヶ条」を述べます。これらは「これから療養指導を始めるとき」「指導に慣れたころ」「指導で壁にぶち当たったとき」「さらなる目標に向かってレベルアップするとき」など、療養指導の臨床現場にかかわっているときには、つねに根底にもっていてほしい心得です。医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などの職種にかかわらず、すべての職種に共通の心得です。 基礎編は、建物やお城の建築でいう土台づくりと考えてください。しっかりした土台をつくることで、はじめてその上に立派な建造物を築くことができます。少しの揺さぶりで崩れるような土台では、その上に積み重ねたものもすぐにグラつき、崩れ落ちてしまいます。まずは、基礎編の7ヶ条の心得を心の奥に留めおき、実際の臨床現場で種々の問題に遭遇したときに、7ヶ条の一つひとつが示すものを反芻して思い起こしてみてください。するとその直面した問題点が、かえって自身のさまざまな経験値として積み重ねられていく実感が得られるはずです。その積み重ねが自信となり、基礎となる土台の上にさらなる大きな、頑強な建造物ができあがることに繋がります。
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