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10さらに多くのヒントがひそんでいます。要は、いかにうまく失敗し、いかにうまくその失敗を乗り越え、いかに多くのことを学べるかという姿勢が大事です。 私の実家は柔道の町道場ですが、新入門の門下生に最初に教えるのは「受け身(倒され方、投げられ方)」です。受け身が確実にできるようになって、はじめて投げ方、攻め方を学びます。いかにケガをしないようにうまく投げられるかが、その後の上達に大きくかかわってきます。フィギュアスケートで転倒しない選手はいませんし、ほかのスポーツや競技でも一度も負けない選手はいません。むしろそういった失敗を乗り越えることで、さらなる成功を収めています。指導の成果を評価しつつ改善点を考えることが重要 もちろん、糖尿病の療養指導は患者さんに対する医療行為ですから、取り返しのつかない失敗は許されませんし、失敗したときに傷つくのは医療従事者より患者さんですから、よい成果を上げようと必死になるのは当たり前です。しかし、ここでいう「失敗を前提に」というのは、「必死になったからといって、必ずしもよい結果が出るとはかぎらない」というスタンスであり、一歩下がってつねに冷静に、客観的に指導を捉える姿勢です。各職種共通ですが、療養指導を行うときに、単にテキストどおり、マニュアルどおりに進めるのではなく、並行してつねにその指導の成果を評価し、どこかに失敗はないか、改善点はないかを考えながら指導することが重要です。 名将、知将といわれたプロ野球の野村克也元監督が、負け試合での報道陣のインタビューで、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という名言を「つぶやいて」います(もともとは江戸時代後期の平戸藩主で剣術家の松浦静山氏の剣術書の言葉らしいのですが)。これはいくら正攻法、正しい方法で指導してもうまくいかないことがあり、そのときにはどこかにその要因がかならず潜んでいるという戒めです。つまり、負け試合からこそ次に活かせるなにかを学ぶことができ、そのことに気づく姿勢がなにより大切なのです。

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