112.答えは現場にあり~患者さんから学び、患者さんとともに歩む~次々に登場する新しい情報 ここ10年来、糖尿病に関するガイドラインが、科学的根拠に基づいた新知見をもとにどんどん改変されています。毎年のように指導書やマニュアル本を買いかえないとついていけないことに焦りすら感じます。また、糖尿病の薬物治療におけるパラダイムシフトともいえる新薬も次々に登場しています。ますます治療法が多様化するなかで、それらの新知見の内容を理解し、新しい情報についていくことだけでも大変なうえに、それを患者さんに伝え指導するとなると、さらにたいへんな労力が必要です。薬物療法だけでなく、糖尿病の療養指導に関しても、表に示すような教育学的、心理学的な理論やアプローチ法が登場し、その有用性が臨床現場で次々に実証されつつあります。表糖尿病の療養指導に有用な教育学的・心理学的アプローチ1.糖尿病の受容過程(例:キュブラー・ロス類似モデル等)2.内的外的要因の処理努力(Coping)3.情緒・物質・情報の支援(Social support)4.認識の再構成、行動修正、社会的支援、リラックス訓練(Stress management)5.問題解決の主体は誰か(Health locus of control)6.予防行動の重大性・有益性の認識(Health belief model)7.自己効力の大きさ・強さ・一般性(Self-ecacy)8.エンパワメントサポート(援助法)糖尿病療養指導の原点は患者さんから学べ これだけ学習すべき内容が次々に登場すると、「これらの理論やアプローチ法を習得していないと、療養指導ができないのではないか」という切迫感、緊迫感をもっている人も少なくないでしょう。そのためにテキストを読んだり講演会・学会に参加したりすることに時間を取られ、神経を費やし、結局は患者さんと接する時間がかえって少なくなることもありえます。 もちろん、このような知識を理解し、身につけることが非常に重要である療養指導克服の心得7ヶ条基礎編
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