はじめに 糖尿病治療の目的は、合併症の発症・進展を抑え、健康寿命の延伸に努めるとともに、個々の患者における最適な生活の質(quality of life;QOL)を保持することです1)。この目標を達成するには、個別化した患者中心のケアを行うという姿勢が求められ、近年のガイドライン改訂ではこの点がとりわけ重視される傾向にありますが1-3)、わが国での日常糖尿病診療では必ずしも十分浸透しているとはいえません。 この点においては個別化医療が進んでいる、がん診療をイメージし、比較してみるとよくわかるでしょう。がん診療においては、「①がんの種類・組織系の診断」のみですぐに治療に移新潟大学医歯学総合病院内分泌・代謝内科助教 松林泰弘(まつばやし・やすひろ)糖尿病薬物療法の基本的な考え方1第章10改善の余地あり通常は調整不可能積極的なし短い新規診断治療目標(個々の症例で適切な値を設定するのが重要!)患者・疾患の特徴低血糖、薬剤副作用と、潜在的に関連したリスク罹病期間予想される余命重大な併存疾患血管合併症患者の姿勢、期待される治療に対する努力(アドヒアランス、セルフケア能力)患者に対する社会的資源、支援体制強化緩和HbA1c7%低い高い活用容易利用困難消極的少ない/軽度重篤なし少ない/軽度重篤長い長期にわたる図1 血糖管理目標の個別化(文献3より引用改変)
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