るといったようなことはまずありません。「②全身評価の結果からステージ分類」を行い、「③ほかの基礎疾患の程度や年齢、日常生活動作(activities of daily living;ADL)を評価」し、「④さらには患者本人、家族の意向なども取り入れたうえで治療指針が決定」する……といった流れが一般的です。 しかし、糖尿病診療においてはどうでしょう。そもそも現在の糖尿病診療では②の概念はほぼ存在せず、また③④に関してもきわめて多忙な診療業務の陰で十分配慮されていない、といったところが現状ではないでしょうか。とはいえ、非常に数の多い糖尿病患者の診療において、多くの医療機関では一人ひとりの患者の診療に割ける時間はごくわずかに限られているのが現実であり、そのなかで前記すべての実践は不可能と考える読者も多いことでしょう。 しかし、前記の考え方をつねに意識して診療にあたることで、個々の患者においてもっとも重視しなければならないポイントが見えてくることは多く、その結果を薬物治療に反映させることはきわめて重要なプロセスです。このスタンスはこれからの糖尿病診療において、医師のみならず、関係するすべてのスタッフが共通認識としてもっておく必要があります(図1)。実際の糖尿病薬物療法の流れ 糖尿病薬物療法は、以下のステップに従い検討を進めていくとよいでしょう。 ■ステップ1 第一に、インスリン療法の適応(とくに絶対的適応にあるか)について十分に考慮します。ここでは1型糖尿病が考えられるケース、高血糖に伴う急性合併症(糖尿病ケトアシドーシスなど)をすでに呈している、あるいはそのような状態に陥りつつある状況かどうかを、確実に判断します。 患者の症状、理学所見(バイタルサイン、意識レベル、脱水所見の有無、重篤な感染症といった高血糖・代謝失調の引き金になるような併発疾患の有無)、体重歴(急激な体重減少など)、病歴聴取(甘い清涼飲料水の多飲歴、症状の経過、家族歴の有無など)が重要です(表1も参照してください)。インスリン療法の絶対的適応が疑われるようなケースでは、すみやかなインスリン治療の開始(多くの場合、緊急入院対応が必要)が必須となります。この判断を誤ると命にかかわる重篤な事態につながるため、非常に重要なステップです。判断に悩むようなケースでは、すみやかに糖尿病専門医へ紹介したほうがよいでしょう。 ■ステップ2 現時点では積極的なインスリン療法の適応ではないと判断されたケース(2型糖尿病患者の大部分がこのケースに当てはまり、以下は2型糖尿病患者であることを前提に記載します。ただし、内分泌疾患や薬剤などに関連する2次性糖尿病を見逃さないように留意しなければなりません)では、「相対的インスリン分泌不全」「インスリン抵抗性」という2つの病態のバラン11糖尿病薬物療法の基本的な考え方第章1第部1
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