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1.インスリンの産生・構造 生体内でほぼ唯一の血糖降下作用をもつインスリンは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞で合成・分泌されます。インスリンは、膵臓でその前駆体であるプロインスリンから産生され、1分子のプロインスリンからインスリンとCペプチド(CPR)が1分子ずつ産生されます。産生されたインスリンとCペプチドは、ともに門脈中へと分泌されます。インスリンは肝臓や末梢組織で代謝されますが、Cペプチドは代謝されず血中を循環し、腎臓で一部代謝され、尿中に排泄されます。 体内のインスリンは、21個のアミノ酸からなるA鎖と30個のアミノ酸からなるB鎖を、イオウ原子が2か所で橋渡しをしたような形をしています。治療で使用されるインスリン製剤には、構造中のアミノ酸を入れ替えて、早く効果を発現したり、効果を長く維持したりする「インスリンアナログ」と呼ばれるものもあります。2.インスリンの作用 インスリンは、筋肉や脂肪組織での糖の取り込みの促進、肝臓・筋肉でのグリコーゲンの合成促進、肝臓での糖新生の抑制、脂肪組織での脂肪合成の促進などにより、血糖値を下げるはたらきをします。このようなインスリンの作用によって、血糖値を一定範囲内に保ちます。 インスリンの分泌には、食後急激に上昇する血糖値を抑えるために分泌される「追加分泌」と、血糖値を上昇させるホルモンを抑えるために、1日中一定量で分泌されている「基礎分泌」の2種類があります(図)。図 追加分泌と基礎分泌引用・参考文献1)日本糖尿病学会編・著.糖尿病治療ガイド2018-2019.東京,文光堂,2018,128p.2)日本糖尿病療養指導士認定機構編・著.糖尿病療養指導ガイドブック2019.東京,メディカルレビュー社,2019,260p. (佐伯 楓・本田一春)朝食昼食夕食血中インスリン濃度基礎分泌追加分泌2「インスリン」とは何?肝臓や末梢組織のブドウ糖の取り込みを亢進して、肝臓におけるブドウ糖の放出を抑制し、血糖値を下げるはたらきのあるホルモンです。11糖尿病ケア別冊第章1糖尿病の病態生理

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