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第1章透析療法の基礎知識11改訂2版 はじめての透析看護近位曲尿細管●尿細管側底膜に能動的Na+ポンプがあり,できた浸透圧勾配,電位勾配により各種輸送体などを通り,糸球体濾液の水分60%とその中に含まれるブドウ糖,アミノ酸,HCO3−など体外に喪失しては困る物質の大部分が再吸収されます.●リン酸の吸収は,ここに作用する副甲状腺ホルモン(PTH)によって抑制されます(リン酸,HCO3−は90%,Na+,Cl−,Ca2+の60〜70%が再吸収されます).ヘンレ係蹄(ヘンレのループ)●ヘンレのループは,髄質深く入り込んでいます.●ヘンレの下行脚は,水の透過性はあるものの電解質などを透し難い性質があり,浸透圧勾配により水が再吸収され下行するほどループ内は高浸透圧になります.●ヘンレの上行脚では水の透過性が低く,Na+,K+,Cl−が能動的に再吸収される部分があり,上行するほどループ内は希釈され,周囲の髄質の浸透圧維持に一役を担っています.●このように髄質深くなるほど高浸透圧を形成するシステムを対向流増幅系(Counter current multipuliar)と呼びます.●皮質は等張300mOsm/kgですが,髄質先端は1,200mOsm/kgと4倍高張になっています.●ヘンレのループではNa+,Cl−,K+は約25%,Mg2+は約60%,水分の15%が再吸収されます.遠位曲尿細管●Na+が能動的に再吸収され,Cl−,HCO3−も再吸収されるとともに,K+,H+が分泌されます.●PTHの調節を受けて,Ca2+の再吸収が行われます.集合管●最終的に尿の水分量,電解質の量を調節する部分です.腎盂腎杯に近づくほど高浸透圧の髄質を貫いています.●下垂体から分泌される抗利尿ホルモン(ADH)が作用する部位で,水分欠乏などで体液の浸透圧が上昇すると,ADHが分泌され,集合管で水チャンネル(アクアポリンとも呼ばれる)が増え水の透過性が高まり,髄質の高浸透圧に従い多量の水の再吸収が促進されます.●Na+の再吸収を促進するアルドステロンの作用部位があります.水とともにNa+,HCO3−を再吸収し,K+,H+を分泌しています.●水分排泄を例にとると,集合管に到達する水分は1日30L程度で,50mOsm/kgの低張ですが,ADHなどで最終調節し,0.5〜30L(1,200〜50mOsm/kg)の幅で調節できます.このように腎臓での水・電解質の調節力が,驚くほど大きいことがわかります.ネフロン各部位での再吸収・分泌1日当たり生体の水・電解質の調節幅1日当たり平均尿排泄水分0.5〜30L2LNa(食塩として)0.5〜30g11〜12g**K20〜500mEq50〜60mEqH〜250mEq50〜60mEq***Ca0〜30,000mg*100mgP0〜30,000mg*1g1日当たりの生体の水・電解質の調節の幅(文献3より転載)  *摂取量としての調節の幅.これらはNaやKと異なり,摂取したものが消化管ですべて吸収されるわけではない. **2005年度国民健康・栄養調査結果***体内で不揮発酸として産生される平均的量●利尿薬では,強力な利尿作用を有するループ利尿薬(Lと略す),降圧作用を有するサイアザイド系利尿薬(Tと略す),K保持性利尿薬スピロノラクトン(Sと略す)の3種が代表的です.●これら利尿薬は血中で蛋白と結合するためボウマン嚢では濾過されず,近位曲尿細管で尿細管管腔へ分泌されます.●Lはヘンレ係蹄の上行脚で,Na+の能動的な再吸収を抑制し,Tは遠位曲尿細管でのNa+の再吸収を抑制することにより,水の再吸収を抑え利尿作用を示します.その際集合管に到達するNa+が増えるため集合管でのK+の分泌が促進され低K血症の副作用を呈することがあります.●Sは集合管でアルドステロンの作用を阻害することによりNa+の再吸収を抑え,利尿作用を示しますが,同時にK+の管腔への分泌も抑制するためK+は体内に保持されます.利尿薬の種類と尿細管での作用部位

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