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編集にあたって この原稿を執筆する10年前、当院はまだフットケアチームを立ち上げたばかりで、患者さんのために何をしたらよいのか模索中でした。ちょうどそのころ、ある患者さんの足病変が悩みの種でした。50歳代の糖尿病のある透析患者さんで、足の指をすでに切断された状態で紹介され、足底部に500円玉くらいの大きさの深い潰瘍がありました。しだいに悪くなる状態にもどかしい思いが募るばかりで、真っ暗闇のなかでもがいていました。 そんなとき、本書の編者であり執筆者でもある西田壽代氏と出会いました。2010年に東京で開催された第8回日本フットケア学会学術集会でのことです。タイトルにひかれて最前列で聴講した西田氏のランチョンセミナーのすばらしさにビビッときました。「足のナースクリニックを立ち上げ、医療機関向けのフットケアのコンサルをはじめたばかり」と聴き、「これはチャンス!」とばかりに講演終了後に真っ先に名刺を渡しに行きました。その場で西田氏のクライアント第一号病院として名乗りを上げました。 それから10年間、西田氏にはずっと当院へ指導に来ていただいています。フットケアの技術だけでなく、器具選びやケア用のシートづくり、患者さんへの指導、ほかの職員への指導など、さまざまなことを一から教わりました。前述の患者さんも、指導のおかげで潰瘍が見事に塞がり、お互い笑顔で話せるようになりました。西田氏とのご縁で、フットケアの仲間も増え、近隣だけでなく他県にもたくさんの友人ができました。 当院のフットケアチームは、10年前には暗闇のなかだったのに、今では当院を代表する看板ユニットへと成長しました。そしてついには、本書の編集・執筆にあたって声をかけられるほどになりました。西田氏からはじまったこれまでのご縁に感謝の思いでいっぱいです。本書はこれまでの恩返しのつもりで引き受けました。本書が、フットケアについて何から勉強をはじめればよいかわからない透析室スタッフの手元へ届き、手に取った方の足元を明るく照らすことを願っています。2020年10月真鶴会小倉第一病院理事長/院長中村秀敏2

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