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なぜフットケアが大切なのかを知ろう 「自身が勤める透析施設でフットケアの活動が上司に認められない」と嘆いている看護師の話を聴くことがありました。「時間がない」、「人手が割けない」、「器具を買えない」、「そもそも必要あるの?」と言われたそうです。聴いていて切なくなりました。次の項で示す「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設されてからは、そのような悩みを聴くことは少なくなったのですが、それ以前のフットケアへの取り組みは、施設によってとらえられ方に大きな差があったようです。 いまや、透析医療現場でもフットケアが必要なことはいうまでもないと思います。しかし、それでももし現場でフットケアの重要性について上司と議論になったときや後輩から質問されたときのために、本稿では「フットケアが大切な理由」の基本的なところを押さえておきたいと思います。歩けなくなるから? 透析患者の四肢切断の年間発生率は0.912%という調査結果があります。つまり、年間で約100人に1人の透析患者が新規に下肢を切断していることになります。また、透析患者のなかで四肢切断の割合は年々増加しており、3.7%(8,787名)にも達しています1)。 透析患者数は全国で約34万人、透析施設数は約4,000件であることから、1透析施設数当たりの透析患者数は平均すると約85名になります。透析患者数が100名を超える透析施設も相当な数があると思われます。そうなると、多くの施設で年間に1名は四肢切断をしている計算になります。切断といっても、部位によって重症度がまったく異なってきます。下肢の動脈硬化、虚血の程度によって、切断が必要になってくる部位が異なるのです。 足切断を大切断と小切断に分類する考え方があります。足関節より体幹に近い部位(つまり大腿や下腿)で切断すると大切断、足関節より遠い部位で切断すると小切断です。踵が残せるような小切断だと義足を装着することなく歩行、起立できることが期待できます。しかし、大切断だと歩行できる可能性がぐっと下がるのです。大切断を受けると、透析患者では10%以下しか歩行できていないというデータがあります2)。 人にとって当たり前の行為である「歩く」ということができなくなると、患者の生活の質(quality of life;QOL)は一気に低下します。社会活動の多くができなくなってしまいます。それどころか、血液透析患者は年間156回の通院がネックとなり、長期入院を強なぜ透析患者にはフットケアが大切なのかなかむら・ひでとし中村秀敏真鶴会小倉第一病院理事長/院長18

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