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8Introduction 「高次脳機能障害は難しい」と思っている人は多いと思いますが、実はそんなことはありません。それは、私たちの誰にでも起こりうる症状だからです。病気やけがによって脳が損傷されて生じる症状には、私たちが疲れているときや落ち込んだときに、集中力が続かなかったり、ものが覚えられなかったりするなど、似ているところがたくさんあります。「この患者さんはどうしてこうなっているのだろう?」と推測してみることで、理解できることがとてもたくさんあるのです。高次脳機能障害の特徴 高次脳機能障害の患者さんに初めて出会ったとき、その言葉や行動がまるで宇宙人のように感じられ、驚かされることがよくあります(図1)。また同じ高次脳機能障害という診断がついていても、人によって症状が異なることがあり、理解を難しくします。 まずはこれらの症状が、高次脳機能障害が原因で生じていることに気がつくことが大切です。 高次脳機能障害は、患者さん本人やその家族、かかわる関連職種にとって、それぞれ深刻な問題を引き起こします。かかわるスタッフは、本人や家族に起こる問題の理解に努め、まずはその苦しみを受け止め、寄り添っていきましょう。 また経験の浅いスタッフが、患者さんの暴言・暴力に苦しみ、悩んでいるケースも少なくありません。スタッフと患者さんの双方への丁寧な対応が求められます(表1)。表1.高次脳機能障害によって生じる問題 本人 ●ADLが自立できない、事故に遭う●復職できない、復職しても長続きしない●人間関係を損なう、孤立、引きこもり 家族 ●接し方がわからない、困惑、不信●介護方法がわからない●介護疲れ 社会または ●患者さんの暴言・暴力、転倒、離棟、他患者とのトラブル●家族の無理解による退院困難 関連職種言っていることがヘン!?・突然思いついて発言する・言うことがころころ変わる・とてもできそうにもないことを、「やる」と言い出す・事実と異なることを平然と言うやっていることがヘン!?・同じことを何度もする・細かいことにこだわって切り替えられない・簡単なことなのにできない症状が多様!?・うまく話せない、理解できない・ちゃんと見えていない・以前のことを覚えていない・言っていることは立派だけど、わかっていない…図1.高次脳機能障害の特徴高次脳機能障害は難しくない!1section

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