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10Introduction 高次脳機能障害の難しさは用語の難解さにあります。そもそも、「高次脳機能障害」と「認知機能低下」はどのように違うのか混乱してしまい、いやになってしまう人も多いようです。本書では、両者は基本的には同じものと考えます。本項では、本書の高次脳機能障害に対する考え方を示し、重要な視点である「全般症状」と「個別症状」について、説明します。個別症状とは? まずはじめに、個別症状について説明します。 高次脳機能障害は、少し前には「失語、失行、認知」といわれました。 「失語」は、言葉を聞いて理解したり話したりすることの障害、「失行」は、道具がうまく使えない、あるいは身振りがうまくできない症状、「失認」は、見たものが何であるか理解することや、触ったものが何であるかを理解することの障害(前者は視覚失認、後者は触覚失認)です。これらの障害は脳の責任領域が比較的明確で、症状は個別の機能に限局しています。ほかにもゲルストマン症候群、バリント症候群など、難しい名前のついた症状がたくさんあります。 高次脳機能障害といえば、個別症状を思い浮かべる人が多く、教科書にも個別症状が中心に書かれています。個別症状は、「目立つ、わかりやすい、知識として身につけやすい」という特徴があります。個別症状については、2章でもう少し詳しく説明します(→p.19)。個別症状脳の局在性が高い全般症状全体で、どの程度うまく働いているか生きていく力環境に対処し、工夫・適応する力失語失認失行●話す、聞く、ものを使う、見てわかるなどの力の低下●知力、総合力の低下●考える、わかる、感じる、決めるなどの力の低下●少し前のことを覚えている知からの低下●注意を集中する力の低下●元気がない●ぼんやりしている図1.脳全体の力脳全体の力は全般的認知能力と個別的認知能力が両輪となって発揮されるものであり、脳全体の力は「生きていく力」へとつながっていく。全体症状と個別症状を理解しよう!2section

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