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1121 章全体症状と個別症状を理解しよう! 脳はさまざまな力を使って全体として働いており、全体の総力として、考えたり、わかったり、感じたり、決めたりしています。また、注意を集中する、ちょっと前のことを覚えておくといった脳の働きは、脳の活動の全般に関与します。この脳の全体的な働きは分けて考えることが難しく、むしろ全体でどの程度、うまく働いているかを考えることがとても重要です。 全般症状は、具体的にとらえにくいうえに、性格、価値観、習慣、気持ちなどの影響を受けます。これまでの人生で培われた、その人の持つ力を含む総合的な力であり、外からは見えにくく、数値化して評価しにくいものでもあります。しかし生活に直結する力であり、その人をどのように援助していくかを考えるうえで、理解しておくことがたいへん重要な力なのです。 認知関連行動アセスメント(Cognitive-Related Behavioral Assessment:以下、CBA)は、そうした全般症状をとらえることができる評価法であり個別症状を含めた脳の総合的な能力を評価することを試みます(図1)。全般症状とは 高次脳機能障害という用語は、「障害」という語に引きずられ「だめなもの」「マイナスなもの」と思われがちです。「高次脳機能障害がある人は、改善が難しい」と短絡的に判断されてしまう場面に出会うことも少なくありません。しかし、どのような障害の人にも残された能力があります。損なわれた面があると同時に、それを補おうとする力もあります。残された力は、大きい場合も小さい場合もありますが、その力に気がつき、理解することで、引き出すことができる場合があります。 CBAは、それぞれの人に残された力を総合的に評価し、どうすれば引き出せるのかを考えることを目指した評価法です。残存能力、総合力、引き出される力まとめmatome●高次脳機能障害のなかで、個別症状は個別の機能の障害ですが、全般症状は全体的な総合力のことです。全般症状はとらえにくく、「見えやすいものの陰にある見えにくいもの」といえますが、人のすべての行動にかかわる重要な力です。 (森田秋子)引用・参考文献1) 森田秋子ほか.認知機能を行動から評価するための認知関連行動アセスメントの開発.総合リハビリテーション.42(9),2014,877-84.2) 森田秋子編.日常生活から高次脳機能障害を理解する認知関連行動アセスメント.東京,三輪書店,2016,109.そもそも、高次機能障害ってなに?

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