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2 2011年に初版を発刊してから早いもので6年が経ちます。自分が取り組んできた頸部聴診法をDVD付き書籍としてわかりやすくまとめるために、悪戦苦闘した日々がつい最近のように思われます。こんなたいへんな作業はもうごめんだと思ったものですが、その後の臨床や研究・教育活動のなかで、もっとこういうふうにすれば評価精度が向上する、ほかのスタッフにわかりやすく伝えられるなど、いろいろな気付きや思いが積み重なり、今回改訂版としてリニューアルさせていただくこととなりました。 この改訂版の大きな特徴は頸部聴診法に音響分析を加えているところです。初版では、嚥下造影映像と嚥下音をセットで見聞きすることで、その特徴を理解しようというものでした。本書では、それに嚥下音波形や周波数分析のグラフを組み合わせることで、より客観的に異常音の特徴をつかむことができるよう工夫しています。聴診した際に、何となく「小さい」「短い」「低い」などと感じていた嚥下音の変化を「なるほど! 実際に波形や周波数でもこんなふうに違いが生じているのか!」と、“目に見える形”で確認することで、より理解が深まるでしょう。 現在、私は長年の病院勤務に区切りをつけ、地域の高齢者在宅ケアの充実を目指し、訪問看護ステーションに職場を移しています。嚥下造影検査(VF)や嚥下内視鏡検査(VE)ができる整った環境から、聴診器1本で評価を行う環境に変わったわけです。頸部聴診法のスキルがよりいっそう心強く感じられるとともに、環境の整った病院からの情報提供書と実際の患者さんの嚥下状態に乖離を感じることが少なくありません。病院では「嚥下が弱い」からと経口摂取を制限され、低栄養に陥っていた患者さんが、在宅での嚥下評価・対応でしっかり3食経口摂取でき、回復されることもあります。 VFをしたからいい評価ができた、施設・在宅だからしっかりした評価ができないというわけではないのです。やはり嚥下リハビリの質の向上のためには、嚥下評価に改訂版の出版にあたり

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