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2 嚥下リハビリは、食べ物を用いる「直接訓練」と食べ物を用いない「間接訓練」に大きく分けられます。「直接訓練」については、嚥下造影検査(VF)などにもとづいた食事形態・姿勢・介助方法の工夫など、専門的な内容が多くの書籍で紹介され、学習する機会が豊富にあります。しかし、「間接訓練」については、アイスマッサージ、シャキア訓練、嚥下体操など、口腔面へのアプローチを中心に画一的な内容が紹介されるにとどまることが多いのが現状です。 本書を手にした皆さんも、「思うように訓練効果が出ない」「指示理解ができない認知症の患者さんには何をしたらいいのかわからない」など、「間接訓練」に悩んでいる人が多いのではないでしょうか? 7〜8年前の私自身もそんな一人でしたが、間接訓練がうまくいかないのは、「アプローチの視点が口腔に偏っていること」と「身体機能へのアプローチ不足」が大きいと気付き、嚥下運動を支える頸部・肩甲帯の筋肉・関節の知識、姿勢や喀出能力を改善させるためのストレッチや下肢・体幹の運動プログラムなど、“嚥下の土台からのアプローチ”に必要なリハビリ技術を勉強し、現場で取り入れていきました。そうすることによって、後頸筋群の筋緊張がほぐれて頸部伸展位が改善したり、座位時に閉口できるようになったり、発熱を繰り返しがちだった患者さんの全身状態が安定したりと、効果が目に見えて感じられることが増えていきました。 間接訓練に悩んでいる皆さん、まずは、今一度、自分が行っている訓練を振り返ってみてください。「舌が前に出ないからガーゼで舌を引き出す」「飲み込みが弱いからシャキア訓練で頸部前面の筋肉を鍛える」など、目の前の口腔の問題だけを見て訓練を行っていることが多かったのではないでしょうか。はじめに

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