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6超高齢社会に対応できる嚥下リハビリへのパラダイムシフト 2011年、日本人の死亡原因の第3位に、脳血管障害に替わって肺炎が浮上しました(図1)。肺炎死亡者の9割以上を高齢者が占めており、加齢に伴って誤嚥性肺炎の発症率が上がるという報告(図2)1)もあることから、今後もさらに高齢者の誤嚥性肺炎が増加することは容易に想像できます。誤嚥性肺炎の治療や予防のために嚥下リハビリの重要性が増してくるのも必然の状況といえるでしょう。 嚥下リハビリは、食べ物を用いる「直接訓練」と食べ物を用いない「間接訓練」に大きく分けられます(表1)。これらの嚥下リハビリは、おもに脳卒中後の摂食嚥下障害に対するリハビリを中心に発展してきた経緯があります。 しかし、私たちが近年現場で対応する摂食嚥下障害患者さんは、基礎疾患が増悪し 最近、テレビや新聞で「死因は食べ物が誤って気管の中に入って起こる誤嚥性肺炎でした」という高齢な著名人の訃報を見聞きしたり、健康関連のバラエティ番組や雑誌でも「のどを鍛える」「飲み込み力をアップする」といったテーマが取り上げられているのをよくみかけるようになりました。日本が超高齢社会に突入して、高齢者の誤嚥性肺炎による死亡者数が増えていることから、その治療や予防のための摂食嚥下リハビリテーション(以下、嚥下リハビリ)に社会の注目が集まっているといえるでしょう。 しかし、食べ物や飲み物のむせの軽減ばかりに目を向けていたり、口やのどにばかりアプローチしたりでは、実は高齢者の嚥下リハビリはうまくいきません。高齢者に誤嚥性肺炎が増加しているのは、加齢や基礎疾患などで“誤嚥が増えること”だけでなく、低栄養やフレイル・サルコペニアといった全身状態の破綻によって“肺炎を発症しやすくなっていること”も大きな要因だからです。 高齢者の誤嚥性肺炎の治療や予防のためには、もっと視野を広げ、全身の筋力・姿勢・呼吸といった“嚥下の土台”にアプローチする必要があります。超高齢社会に対応できる嚥下リハビリへのパラダイムシフトが求められているのです。1“嚥下の土台からアプローチする” 嚥下リハビリを目指そう!

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