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総論:在宅看護で求められる知識と技術Q&A19①転倒の要因東京大学医学部・大学院医学系研究科成人看護学/緩和ケア看護学分野が、「訪問看護師支援サイト」として訪問看護の質指標の開発を手掛けたサイトを紹介します1)。サイトの一項目である「転倒予防」の欄を見てみましょう。転倒予防を目的とした看護介入に関するキーワードには、「転倒リスクアセスメント」「生活環境の整備」「セルフケアと家族指導」「排泄障害」「認知症」「パーキンソン病およびパーキンソニズム」「骨粗鬆症」「白内障および視力低下」「内服薬の副作用」「フットケア」「多職種連携によるアプローチ」「転倒時のケア」が挙げられています。転倒予防ケアには、このように多角的な視点が必要だということがわかります。②転倒のリスクを減らすには患者が、パーキンソン病で高齢で、骨粗鬆症を長年患っていて、骨折のリスクが高い状態の方だとしたら、どう関わりますか。家屋の中をよく見て、患者の動線を考慮しながら、手すりの設置や伝い歩きするための家具の再配置、危険な段差の解消や室内の片づけを患者とともに行います。また、マットレスやクッションを敷くなどして、転倒してもけがをしないような工夫をすることもできます。手すりを活用する前には、つかまれるだけの握力や、バランスを崩しても倒れない足腰の筋肉を鍛えることもできるでしょう。筋力がつくまでは、這って移動できるならそれも良いとした方向で、患者本人が今できること、将来に向けて取り組むことを整理して伝え、一緒に目標に向かっていくことが良いでしょう。このように、リスクを共有し、患者本人と医療従事者がそれぞれできることを探し、それに全力を尽くすことで、互いに責任を果たすことになるのだと思います。リスクをゼロにすることは不可能です。ですが、そのリスクを互いが背負うことで、リスクを減らすことができます。患者が主体である自宅という環境で、医療提供する方法論の中核となる考え方の1つとして「リスクの共有」があると考えています。複雑な状況下にある患者がより良く生きるために看護師としては、状況を整理して伝え、互いの立場でできることを整理して、それぞれが責任を果たす関係性を作っていくことだと考えています。(山田雅子)

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