30 アドラーは一八七〇年、ウィーン郊外で七人兄弟の二番目として生まれました。父はユダヤ人で穀物商を営んでいて比較的裕福な家庭で育ちます。彼は幼い頃からくる病(骨軟化症)のため身体の自由が利かず、優秀で健康な模範的な兄に対して強い劣等感をもっていたといわれています。そんな病弱なアドラーでしたが、友だちと屋外で遊ぶことを好む人気者で、やがて病はよくなります。 アドラーは五歳のときに、わずか一歳だった弟をジフテリアで亡くしています。ある日、同じ部屋で寝ていたアドラーが目を覚ますと、弟は横で冷たくなっていました。またアドラー自身も五歳のとき、肺炎で死にかけるということがあったそうです。これらの体験から幼くしてアドラーは「死と生」について関心をもつようになり、それが医師になるきっかけとなったといわれています。
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