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1意識の定義と意識障害1…意識の定義 哲学、心理学、精神医学的に意識は、私たちの心あるいは主観的認識全般を含んだものになっています。しかし、医療・介護に携わる立場では、障害要因の探索・治療・介護などに主眼を置くため、千変万化する心の中、つまり意識の本質にはあまり踏み込まず、覚醒していること、そして誰もがもつ共通の基本的認知、すなわち「自分が何者で、どういう環境に置かれているかがわかっていること」としています。2…意識を構成するメカニズム(図1) 意識には、覚醒と意識内容の2つの要素があり、互いに影響を受けながら意識水準が決定されますが、両者をできるだけ分けて考えることが、意識障害の発生・病理を理解するうえで重要です。1)覚醒(arousal or alertness) 目覚めているということで、意識内容を維持するために必須の生物的・客観的要素です。覚醒機能が壊れると意識はなくなります。橋きょう・中脳にある脳のう幹かん網もう様よう体たいから間脳や大脳皮質に広がる上行性網様体賦活系(ascending reticular activating system:ARAS)が覚醒機能を維持しています。2)意識内容(contents of consciousness) 自分が何者で、どういう環境に置かれているかがわかっているということで、心理的・主観的な精神活動、つまり、意識の本体です。脳の運動系、感覚系、情動系、記憶系の階層的なネットワークで統合された種々の情報をもとに、多種感覚連合皮質(hetero-modal association cortex)とよばれる大脳皮質領域で形成されると考えられています。1意識・意識障害とは図1 意識を構成するメカニズム多種感覚連合皮質(意識内容)思考運動知覚視覚聴覚脳幹大脳辺縁系(情動)間脳(記憶)多種感覚連合皮質(意識内容)脳幹網様体(覚醒)2

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