302260141
2/12

2これからの日本の地域医療や地域包括ケアシステムを支えていく柱として、医療と介護の両面からアプローチできる訪問看護への期待は大きく、政策にも後押しされています。稼働している訪問看護ステーションは2020年度には11,931カ所となり、2014年以降は毎年、約1,000カ所近く増え続けています。一方、廃業や休止をしているステーションも少なくありません。それぞれの理由はあると思いますが、管理者である看護師は、在宅療養者への思いや訪問看護への熱意はとても強いのに、経営や組織運営がうまくいかずに立ち行かなくなることもあるようです。こと事業経営については、看護職が集中して学ぶ機会が少ないことに加え、介護保険と医療保険の両方にまたがっているがゆえに、訪問看護の報酬の仕組みも複雑で、迷うことも多々あります。しかし、組織のしくみができ上がっている病院とは異なり、訪問看護ステーションという小規模組織の運営には、管理者がどのような思いや構想で組織作りをしていくかが大きな影響を与えます。仕事の責任や負担は大きいけれど、管理者という同じ立場の人達と知り合い、前向きに、楽しく事業運営を行えるよう、全国訪問看護事業協会では管理者になったばかりの方や経験の浅い方を対象に、新任管理者研修会を開催してきました。また、2020年度からは、オンライン配信によるWeb研修会を実施しています。研修会では、諸制度、経営の数字の見方、組織運営·経営管理などの基礎を学ぶことができます。当書籍は新任管理者研修会の副読本として2018年に初版を発刊し、今回、改訂版として、最新情報や報酬改定の内容を盛り込みました。さらに、昨今の社会情勢を踏まえ、ICTの基礎知識や、訪問看護ステーションにおける危機対応の内容を追加しました。1章では訪問看護に関わる諸制度や保険、2章と3章では管理者の役割や管理業務の基本、4章では経営に必要な統計データや情報の扱い方、5章ではICT活用の基礎知識、6章では質の向上に必要な自己評価ガイドラインを紹介しています。また、実際に訪問看護ステーションを立ち上げ、経営や運営をしている先輩管理者の方々にもコラムで登場いただきました。責任も大きいですが、やりがいはさらに大きい訪問看護管理者の仕事が、少しでもより良くできるよう、管理者として身につけておきたい考え方や経営・組織運営の基本を当書籍で学んでいただければと思います。そして、それぞれの地域や在宅療養者の方々のニーズに添いつつ、管理者それぞれの思いを形にできる訪問看護を、自信をもって生み出していく原動力になればと願っています。はじめに2020年10月一般社団法人全国訪問看護事業協会 事務局長 清崎由美子

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る