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11はじめてみよう訪問看護療養者を支える看護第1章 専門職として「看護がめざすこと」は,病院でも施設でも療養者の自宅でも,共通しています.しかし,「訪問看護は病院での看護とは違う」と感じる看護職が多いのも事実です.なぜでしょうか.2 治療の場での看護と,生活の場での看護の違い●病院は治療するために一時的に滞在する場所であり,自宅はそこで生活し暮らすための場所です.●いかに早く回復し退院するかをめざす場所と,いかに長く安定した生活を送れるかをめざす場所では,どのような医療やケアが「生命力の消耗を最小にし」「自然がはたらきかけるに最も良い状態におくこと」になるのかが異なります.●療養者の自宅での生活状況や,これまでに歩んできた人生や価値観は千差万別であり,その人にとってどのような医療やケアが「看護」となり得るのかも,千差万別といえます.生活の場で求められる看護の役割 対象者が在宅で主体性をもって健康の自己管理と必要な資源を活用し,生活の質を高めることができるようになることをめざす. 訪問看護従事者によって,健康を阻害する因子を日常生活のなかから見出し,健康の保持・増進・回復を図り,あるいは疾病や障害による影響を最小限にとどめる.また,安らかな終末を過ごすことができるように支援する. そのために具体的な看護を提供したり指導して,健康や療養生活上の種々の相談に応じ,必要な資源の導入・調整をする.(1990年度日本看護協会訪問看護検討委員会)ケース 79歳の男性 糖尿病 近くのコンビニエンスストアまでなら杖をついて外出することができ,ビールを買って晩酌するのを楽しみにしている. 定期検診でHbA1cが上昇していると主治医からケアマネジャーに連絡があった.ケアマネジャーが自宅を訪問すると,処方薬が大量に残っており,定期的な服薬ができていないことがうかがえた. ケアマネジャーは療養者に訪問看護を利用することを勧め,主治医と連携して訪問看護が開始されることになった.療養者の糖尿病の経過や現在の病状について,主治医に確認しましょう.急な変化なのか,以前からのことなのか?服薬できておらず,数値が上がっていることは合併症の発生など生命力の消耗につながります.療養者自身は,病気についてどのように認識しているか?食事内容やお酒の量はどうなっているか?生活状況について,ケアマネジャーからも情報を得ましょう.療養者が食事やお酒について自分で配慮できそうなところがないか,話し合ってみましょう.薬が残ってしまうのは,なぜなのでしょう.脳梗塞などを起こさずに,晩酌を楽しめる今の生活を続けるには,服薬の継続が大切だと伝えていきましょう.配薬カレンダーなど,自分で薬を管理しやすい道具を提案してみましょう.*ケアマネジャー:介護保険利用者の相談に応じて,介護サービス計画(ケアプラン)を作る専門職.

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