3はじめてみよう訪問看護 はじめてみよう訪問看護. この本をつくった理由は,本書のタイトルに尽きます. 「訪問看護を自分の専門分野にしていきたい」「いずれは訪問看護をしてみたい」「子育てしやすい働き方で看護を続けたい,再開したい」.そんな声を,看護学生からも病院勤務の看護師からも休職中の看護師からも耳にするようになりました.訪問看護が,看護師の働く場のひとつとして広く認識されるようになったことを実感し,嬉しい限りです. 一方で,訪問看護ステーションの管理者の方々は「なかなかスタッフが集まらない」「紹介会社からの雇用に頼らざるを得ず,金銭的な負担が大きい」など,しばしば求人に悩んでいます.近年,訪問看護の初心者に向けた本がいくつも出版されている背景には,「訪問看護にチャレンジした新任の看護師を少しでも支えたい」という現場の思いを感じます. 医療の高度化と少子高齢化により在宅ケアのニーズが高まり,訪問看護事業所もどんどん増えているなかで,どうしたらもっと多くの看護師が就職先や転職先として訪問看護を選び,一歩を踏み出すことができるか…. この本は,訪問看護をはじめたあとに必要となる知識や技術だけでなく,そもそも訪問看護を「はじめる前」の看護師の「興味と不安」に答えることをめざしました.病院と在宅での看護の違いは何か,訪問看護をはじめるにはどんな経験が必要なのか,就職先はどう選んだらいいのか,入職後の研修はどんな内容なのか,多様な働き方や給料・待遇についても盛り込んでいます. また,同行訪問を卒業し,一人で訪問した際に療養者の状態が変化していたときの対応,事故やハラスメントから自分を守る方法や対応,緊急当番とはどういうものかなど,訪問看護ならではの業務やリスクマネジメントについても忌憚なく記載しました. 訪問看護は,私たち医療者にとっての「ホーム」である病院を飛び出して,療養者の自宅という「アウェイ」で,療養者の家族も含めた個別性の高い看護を提供します.「訪問看護はおもしろそうだけれど,なんとなく心配」というみなさんの背中を押すべく,執筆には各事業所で活躍する訪問看護のエキスパートに集結していただきました. 地域で暮らす療養者の生命と生活と人生に関わり,多職種で支えていくというドラマティックかつクリエイティブな訪問看護の世界と,あなたをつなぐ一助になれば幸いです. 2020年1月医療法人社団恵仁会なごみ訪問看護ステーション 地域看護専門看護師宮田 乃有はじめに
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