9はじめてみよう訪問看護療養者を支える看護第1章ケース1 82歳の女性 膝関節症 普段はおおむね自立した生活ができている.連日の猛暑のなか,部屋で倒れているところを隣人が発見し,救急搬送された.熱中症と診断され,医師の指示により看護師が輸液を行った. その後状態が改善し,翌朝独歩にて退院となった.気温・室温の上昇のため,脱水を起こしていると考えられ,生命力が消耗しています.意識レベルが低下しており,経口摂取は困難です.静脈からの輸液により水分を補給し,患者自身の代謝機能によって回復をめざしましょう.エアコン等の使用により室温を適切に保ち,水分をこまめにとることを勧めましょう.在宅支援が必要なら,地域連携室につなげます.ケース2 76歳の男性 肺がん 呼吸器科病棟で治療中.終末期と診断され,本人は在宅療養を希望. 経口摂取量が減少したため,医師は退院前にIVH(中心静脈栄養)を実施することを提案し,患者も同意した. 看護師は患者の浮腫が増強し,痰がらみが増加していることを観察した.これ以上の治療は,かえって患者の生命力の消耗を招いてしまいます.体力・気力のあるうちに退院できるよう,調整していきましょう.代謝機能の低下している終末期の患者に高カロリー輸液を多量に行うことは,かえって生命力を消耗させてしまうこともあります.本人・家族は同意していますが,退院できるタイミングを逃さないようにしましょう.状態を医師に報告して輸液の減量・中止について相談しましょう.苦痛症状を緩和したうえで早急に退院の意向を確認し,調整します.何をすること/しないことが「看護」になるか看護師の業務2)絶対的医療行為療養上の世話保助看法37条但書相対的医行為診療の補助保助看法37条本文看護業務(保助看法5条)医行為(医師法17条)医師と看護師の関係2)療養上の世話絶対的看護行為=診療の補助相対的看護行為相対的医行為=看護師が行えない行為絶対的医行為= 例えば「輸液」は,看護師の診療の補助行為の一つですが,「=看護」でしょうか? 「保清」は看護師による療養上の世話の一つですが,それだけで「=看護」でしょうか? 「患者の生命力の消耗を最小に」「自然がはたらきかけるに最も良い状態に」という視点で考えてみましょう.
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