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2 「利用者へのケアの質の担保」と「スタッフの安全確保」の両立を目指して 多死社会、超高齢社会において、地域包括ケアを担う重要な人材である訪問看護師や訪問介護員が、安心して安全な職場環境で働くことを保障することが重要です。利用者へのケア提供と経営状況を最優先し、スタッフの健康、安全が脅かされてはいけません。車の両輪のように、「利用者へのケアの質の担保」と「スタッフの安全確保」の両立が必要です。 真の意味で、24時間訪問巡回サービスを展開するといった在宅ケア事業を推進するのであれば、同時に24時間訪問に従事する人の安全対策も十分に整備した上で、事業をスタートするべきです。利用者・家族からの暴力・ハラスメントの被害で、スタッフが離職することなく、安心して在宅ケアを実践でき、また利用者や家族にとってもケアを受け続けることができる、すなわち「安全」と「ケアの質」が同時に保障されるべきではないでしょうか。 在宅ケアの現場での暴力・ハラスメントの問題において、利用者・家族 VS 訪問看護師の対立構造を煽ってはいけません。そして、訪問看護師だけが、利用者・家族から一方的に暴力・ハラスメントの被害を受けているわけではなく、その逆もあり得ます。そのことを私たちは十分に知っておく必要があります。そのため、在宅ケアの現場での暴力・ハラスメントの被害事例やその深刻さを声高に発信し社会の関心を集めるのではなく、今の時代に必要な教育とトレーニングを行うことで、スタッフが暴力・ハラスメントからの防御法を習得し、暴力・ハラスメントに脅かされ萎縮することなく、利用者に質の高いケアを提供することを目標としたほうが良いのです。 そのような意味で、本書は初の「訪問現場での暴力・ハラスメント対応」のテキストです。12

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