はじめに 利用者宅に単独で訪問することの多い訪問看護師は、サービスを提供する環境の密室性などから、利用者・家族から暴力・ハラスメントなどの行為を受けることがあり、時に犯罪的行為にも及ぶ危険性をはらむ場合もあります。全国訪問看護事業協会では、それらの問題に取り組むため、2017年度〜2018年度に「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業」の検討委員会を設置し、実態調査を実施しました。この事業のねらいは、事業所の管理者が自事業所における労働者の安全と健康を確保する意識を高め、訪問看護師が安全に安心して訪問看護活動を行うことができると同時に、利用者・家族も安心して訪問看護サービスを受けることができるようにするためです。訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力の実態調査を実施し、方策の検討を行い、検討内容を啓発ポスターや書籍としてまとめ、それらについて周知・普及を図ることを目的としています。 この研究事業を通して実現したいことは大きく3つです。1つ目は、訪問看護師たちが起こった出来事を暴力と認識し、看護師個人の問題ではなく事業所の問題としてとらえ、事業所のスタッフ同士で共有して対策を考えられる環境をもてることです。2つ目は、事業所の管理者の役割として、利用者・家族を守ることと同じくらいスタッフを守る責任があることに気づき、そのための行動を起こせるようになることです。3つ目は、暴力に対して判断したり対処したりするときの管理者のサポート体制が整うこと、つまり、弁護士やリスクマネジャーなどの専門家の支援を受けられる環境が整うことです。 訪問看護の現場の暴力が明らかになっていくことで、訪問看護という仕事は怖いものと思われてしまうのではないかという心配の声もあります。でも、実はそうではなく、事実を正確に把握して利用者や家族が暴力に至る経過をしっかりと理解し、予防策も含めた対応をすることで避けられる暴力が3
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