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11章1イラストで理解! 高齢者の特徴組織や器官に共通する変化 細胞は加齢により、細胞のタイプを問わず、核にも細胞質にも変化が起こります。核は次第に増大し、核小体も大きくなり増加します。タンパク質容量は増加しますが、その合成は減少します。細胞内小器官の変化もさまざまに認められます。全体として、細胞は加齢により大きくなる一方、分裂し増殖する能力が落ちていきます。 組織にもさまざまな加齢変化が生じます。その一部として細胞外基質であるコラーゲンの構造に不可逆的変化が生じ、また組織中のエラスチン含量が減少します。それらの変化により組織は硬化し、伸縮性や柔軟性を失っていきます(p.14参照)。 器官レベルで見ると、各器官の生理学的予備能が30歳くらいから直線的に下降します(図1)。各器官の予備能は大きいので、すぐ機能低下を起こすわけではありませんが、予備能が減ることで、器官が高度のストレスにさらされた場合は機能低下や機能不全を起こしやすくなります。 機能低下が複合的に絡み合い、病的経過をたどることも多く見られます。そのようにして、高齢化と強く関連する、転倒、慢性めまい症、尿失禁、せん妄など、さまざまに組み合わさった症候が生じてくると、「老年症候群」と呼ばれる状態になります(図2)。機能低下が障害/疾病のレベル10080臓器や器官による差および個人差予備能30歳を100として予備能変化の一例:さまざまな指標で身体的予備能は低下していく。図1 加齢による予備能の変化図2 老年症候群物忘れ、慢性めまい、せん妄尿失禁関節痛、歩行障害、転倒視力低下老化と関連する、上のようなさまざまな症状・徴候が重なった状態を表す。難聴嚥下能の低下、口渇

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