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12ホメオスタシスの変化 ホメオスタシスとは、各器官が連携して生体全体としての恒常性、つまり刻々と変化する外部環境に対応して生体の内部環境を一定に保とうとする調節機構のことです。激しい外部環境の変化にどれだけ適応できるかには個人差がありますが、一般的に言うと老化によってこの調節能力は低下します。 ホメオスタシスの代表は体温調節や体液調節です。例えば外気温の低下では、皮膚血管の収縮などにより熱損失を防ぎ、骨格筋の震えで熱産生を増加させます。このように外気温の変化に応じて、放熱の調節、体熱の産生をすることにより体温を維持します。高齢者では寒冷時の震えや高温時の発汗が減少し、体温の調節能力が低下します。その結果、異常高温や異常低温では死亡率が高まります。言い換えれば、高齢者においては環境温度を適切に保つということに注意が必要になります(図3)。 また体液量は加齢によって減少していきます。これは主に細胞内液量の減少によります。細胞外液量にはあまり変化がなく、その電解質濃度も一定です。ただ、高齢者は諸器官の予備能の低下から脱水が起こりやすく、その場合は電解質の異常が生じる可能性が高くなります。特にナトリウム濃度低下、カリウム濃度上昇・低下などが発生しやすくなります。図3 体温調節能力の低下のどの渇きにも気づきにくい暑さ寒さを感じにくくなる発汗低下暑さや寒さに対応が難しくなる。

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