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004の嚥下障害を中心にして発展してきました1).脳卒中になり急性期病院に運ばれ,手術や点滴などで全身状態が落ち着いたあとに,脳卒中後の後遺症の回復を期待して行われるのが「回復期のリハ=訓練」です.後遺症には嚥下障害も含まれますので,嚥下障害も回復を期待して嚥下訓練が行われます.この回復期をメインのステージとして,嚥下リハはさまざまな対応法や訓練法が編み出されてきました.それを機に嚥下リハは広まり,目覚ましく進歩し,今の嚥下リハの礎を築いたともいえます.始まりが「嚥下訓練」だったため,これが嚥下リハのイメージとして広まり定着したのでしょう. では施設や在宅の高齢者を思い出してください.訓練が効くでしょうか? それよりもまず訓練をしてくれるでしょうか? 一部の高齢者は可能かもしれません.しかし,嚥下障害を呈しているような方が難しい訓練手技を理解してやってくれるでしょうか? 施設や在宅の高齢者の嚥下障害を訓練で回復させることは非常に困難です. 一つ目の理由は,施設や在宅にいる高齢者の多くは回復期ではなく,慢性期(維持期)であるということです.回復期が終わり,その名の通り症状が慢性化した状態です(図2).一般に慢性期まで残った後遺症を訓練で改善させるのは非常に困難となります.手足の麻痺で考えてみましょう.脳卒中後数年経過している手足の麻痺を,訓練だけで改善させるのが難しそうなことは想像がつくでしょう(図3).嚥下障害も同じです.慢性期まで残った嚥下障害を訓練でみるみる回復させるのは困難です.在宅や施設の高齢者の嚥下の特徴31) 嚥下訓練できる? 効く?脳卒中後の経過の概念図図2生命活動低時間脳卒中発症慢性期急性期高回復期急性期や回復期は,今障害があったとしても,その後の回復が期待できます.慢性期では著しい改善は期待できません.脳卒中後3年経過した患者さん図3右上肢に麻痺(痙性)がみられます.3年が経過して残存している麻痺を訓練のみで改善するのは困難です.

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