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003はじめに〜施設や在宅の食の現状第1部す.この言葉はどこかで耳にしたことがあると思います.最近はメディアでも取り上げられることが増え,かなり広く知られるようになってきました. では嚥下リハというとどういうイメージでしょうか? 嚥下リハといえば「訓練をして嚥下機能を改善させる」ということをイメージする方も多いかもしれません. これが手足の機能障害であれば,家族も訓練とは言わなかったかもしれません.95歳で寝たきりのアルツハイマー型認知症の患者さんに対して,「訓練すれば歩けるようになる」とは家族もなかなか考えないでしょう.でも,私の経験では「嚥下障害は訓練で改善する」と思っている家族が多くいます.ではなぜこれほどまで「嚥下リハ=訓練」というイメージが広まっているのでしょうか. 「嚥下リハ=訓練」というイメージが定着した理由の一つは,嚥下リハという学問・臨床が行われてきた歴史にあります. これまでの嚥下リハは,どちらかというと脳卒中の回復期*1) 訓練すれば嚥下障害が改善する? 家族から「最近,水分でムセるようになったので診てほしい」という訴えで病院を受診されました.嚥下内視鏡を使って嚥下機能を調べたところ水分は少量の誤嚥がありましたが,とろみをつけると誤嚥なく嚥下できていました.その検査結果をもとに「これから水分にはとろみをつけましょう」という説明をし,家族にも理解をいただき診察を終わろうとしていたところ,家族から「先生,嚥下訓練は何をすればよいですか?」という質問がありました.その時は,正直ちょっと困ってしまい,お茶を濁すような返答をしてしまったのを覚えています.なぜ返答に困ったかというと,その患者さんは95歳で寝たきりのアルツハイマー型認知症だったのです.「嚥下訓練をお願いします!」という家族2) 嚥下リハの歴史●ムセる●食べない●食べこぼす●丸飲み●食事に時間がかかる●口に溜める●ノドがゴロゴロ鳴る●ノドにつかえる●食べるペースが早い●よだれが出る●飲みこめない●薬が飲めない●窒息●誤嚥●胃食道逆流など嚥下障害の具体的な症状表1 脳卒中は発症後数週間の「急性期」,6か月後までの「回復期」,6か月以降の「慢性期(維持期・生活期ともいう)」の3つの期に分けられます.*

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