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緒 言 世界に先駆けて超高齢社会を迎える日本は、2025年までに高齢者3,500万人のうち2,200万人が後期高齢者となることが予測されています。このような状況を踏まえて看護領域では、要介護者の増加に備えることが喫緊の課題となっています。疾患の後遺症や廃用障害などで介護を必要とする高齢者への適切な看護活動は、日々のQOL(quality of life、生活の質)向上に貢献するだけでなく、要介護者の減少にも期待できます。そのような、適切な看護が効果を発揮する疾患の一つにパーキンソン病(PD:Parkinson disease)を挙げることができます。  パーキンソン病は難病の一つで、罹病者は15万人から16万人と増大の傾向にあります。その背景には、パーキンソン病が高齢になるほど発症率が高い疾患であること、また診断技術の向上により、従来パーキンソン病と診断されずに経過してきたケースが顕在化していることなどが考えられます。運動障害を主たる症状とするパーキンソン病は、加齢によって身体機能が衰退していくプロセスに加えて、生活行為の遂行が妨げられることからQOLが低下し、要介護者となる可能性が高くなります。パーキンソン病は知名度の高い疾患ですが、パーキンソン病の症状は多種多様で、アセスメントやケアが非常に難しく、治療法が、薬物と運動(リハビリテーション)が主流であることからも、パーキンソン病に特化した看護の専門書が国内においては少ないのが現状です。  このたび,臨床経験をベースに医学的な解説を踏まえながら、パーキンソン病に関する理解と実践の根拠についてもわかりやすく、パーキンソン病看護の専門性をひろく紹介すべく、本書を企画・刊行する運びとなりました。奥が深く難しいパーキンソン病の看護ですが、高齢者看護などの基本としてよく知られているものは重複を避け、パーキンソン病看護の専門的視点から必要な看護活動に注目して展開記述しています。  本書が、パーキンソン病看護で悩む臨床家の一助となり、パーキンソン病患者のQOL向上を目指す専門領域看護の可能性を拓く端緒となれば幸いです。 2019年1月吉日 筑波大学名誉教授 紙屋克子

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