3.診断がついた後の支援 認知症は、脳ドックや核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)、陽電子放射断層撮影(positron emission tomography;PET)などによって、早期に診断がつくようになってきました。早期に診断がつくことにより治療可能なものが見つかったり、その後の治療やケアに対して本人の意思が反映できる、将来を考えて心構えができるといった利点があります。しかし、それ以上に本人や家族はかつてがんの宣告を受けた人がそうであったように、自分のことが自分でできなくなってしまうという大きな不安に駆られることになるため精神面への支援が重要になっています。これは記憶障害や判断力が低下してしまうということ以上に、それらによって起こる失敗、を他人がどう思うかという苦しさであるとされています。社会全体が、そのような認知症の患者さんの気持ちに寄り添い、さまざまに起こってくるであろう症状や行動は、患者さん自身の気持ちの表れと捉えて、温かい社会の実現が重要であると考えます。認知症の行動・心理症状(BPSD)を理解する BPSD とは、一体、どのような症状を示すのでしょうか。BPSD の定義は、国際老年精神医学会(international psychogeriatric association;IPA)によって、「認知症患者に頻繁にみられる知覚・思考内容・気分または行動の障害による症状」と定義されています4)。発現や経過は個々によって違いがあり、さまざまな症状が誰にでも起こるということではありません。また、これらの症状の中には、認知症に特有ではないものもあります(次ページ図2)。 認知症の患者さんに見られる物忘れや見当識障害、判断力の障害などの中核症状と言われるものを背景にして、そこに不安感や焦燥感、孤独感やストレス、便秘や脱水、発熱、呼吸困難、電解質異常などの身体的不調や白内障や緑内障、難聴などの感覚器の障害、さらにはケア提供者の不適切な対応や、入院・検査などの環境変化などもBPSD の要因になります。さらに、経管栄養や留置カテーテル、点滴などによる不快、ミトンや介護衣の利用などによって、自由が奪われる状態なども要因になります。 実際に起こってくる症状の中には、特定の認知症に特有なものもあります。例えば、レビー小体型認知症では、繰り返される鮮明な幻視・幻聴(本人も111. 認知症のある患者さんに接するときにまず知っておきたいこと
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