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第1章3はじめてのICU看護はじめに 新生児の看護にかかわりたいという思いで希望したのであっても,NICUは想像していた以上に初めて経験することばかりで,緊張の連続かもしれません.看護師になって初めて配属された病棟がNICUだったという方もたくさんおられることと思います.なかには,まさかNICUとは予想もしていなかったという方もおられるかもしれません. 看護師として看護を提供するということは,看護の対象である個人とその家族を,身体的・心理的・社会的な多側面から全人的に捉え,それらの対象が自立し日常生活ができるように援助することです.看護の基本はだれが対象であっても変わるものではありませんが,実際にはNICUでの看護は特有で特殊性も強く有しています. NICUに入院中の赤ちゃんは,さまざまなニーズを言葉で表すことができません.私たちが提供したケアについて,心地よくても悪くても,評価することができないのです.だからこそ,赤ちゃんの反応や表情でケアの結果がどのようであったかを判断することが必要になります. 先輩看護師から「赤ちゃんが教えてくれる,赤ちゃんから学びなさい」という言葉を聞かされたことはありませんか.言葉を発しない赤ちゃんのサインを読み取るには,まず,正しい知識を習得することが必要です.そして,一つひとつの看護技術を正確に丁寧に,さらにすばやくできるようにならなければなりません.小さな赤ちゃんにケアを提供するには,繊細で心のこもった技術が要求されるのです. NICUという環境で戸惑うことも多いかもしれませんが,いつか近い日に,“赤ちゃんの声が聞こえる”ようになることでしょう.その声が聞こえることが,新生児看護に携わる看護師の目標の一つであり,看護師としての喜びや楽しみを感じることにつながります.そのために,一人ひとりの赤ちゃんを一人の人間として尊重して思いやり,正確に安全にそして安楽にケアを行うことを心がけてください.小さかった赤ちゃんの成長した姿が,皆さんに新生児看護の魅力を教えてくれるはずです. 2013年11月宇藤 裕子

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