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010はじめに 新生児の適切な発育発達には環境の影響が大きいが,早産児・低出生体重児はより未熟でかつより体重が小さいのでその医学的リスクが高いことから,より医療行為による侵襲・ストレスが加わる.未熟児の生存率が世界で最も高いわが国において,さらにその予後を含めた成績の向上のためにはDCのもつ意味が大きい.本項では,DCの生まれた背景とその基本理念を解説する.1.ディベロップメンタルケアが生まれた歴史的・医学的背景 ディベロップメンタルケア(developmental care:DC)は,これまでの治療と診断中心の新生児医療から,個々の児に目を向けてより侵襲の少ないケアによって心身のすこやかな発育発達を目指す概念に基づくものであり,その誕生は以下に述べるごとく時代の必然であった. 1988年の日本の乳児死亡率は4.8(死亡数/出生1,000)となった1).それは,小児科医にとって100メートルを10秒で走るような夢の「乳児死亡率5」の壁を,アメリカやイギリスでなく,わが国が人類史上初めて破った忘れ難い歴史的出来事であった.さらに,未熟児,特に超低出生体重児の予後においても,わが国は他国より数段優れた成績を示している2).しかし近年,intact survivalという視点から考えたところ,運動障害●未熟児のintact survivalと思われたなかに,高次脳機能障害児が多いことがわかってきた.●その原因がNICUでの過剰なストレスによることが脳科学研究から示された.●児に侵襲を加えないディベロップメンタルケア(developmental care)がその予防に重要であることが認められた.●2009年にその理念と実践を広めるディベロップメンタルケア(DC)研究会が発足した.早産児・低出生体重児とディベロップメンタルケア総 論

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