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013総 論早産児・低出生体重児とディベロップメンタルケアを開発し,さらにNIDCAPに発展させた4). その成果は1994年に米国医学会誌(JAMA)に発表され5),これまで見過ごされていた未熟児へのストレスが神経系の発達に長期的な影響を及ぼし,特に高次脳機能障害に起因する認知異常・行動異常を引き起こすことを示した.この論文が,多くの新生児学者に大きなインパクトを与え,これまでのNICUでの医療・看護業務を考え直すきっかけとなった.現在はNIDCAP Federation International(NFI)を中心に,NIDCAPのトレーニングプログラムや施設認定のシステムが確立されている.4.わが国におけるディベロップメンタルケアとNIDCAPの導入 わが国でも新生児医療の「保温・栄養・感染防止」の古典的3大原則に,NICU導入時から「母子関係確立と非侵襲的養護」が加えられていたが,ようやく学問的背景のあるDCの理念が普及してきたのはこの10年ほどである. そのAlsらのJAMAの論文5)などに大きな衝撃を受けた筆者は,2007年の第43回日本周産期・新生児医学会にAlsを招き,わが国で初めてNIDCAPの学問的背景についての講演が行われた.それがきっかけとなり,Brazeltonの下でNBASの研修を終えて既にNIDCAPの臨床的重要性を認知していた大城昌平が,筆者に日本ディベロップメンタルケア(DC)研究会の立ち上げを呼びかけ,2009年11月15日には,「わが国にディベロップメンタルケアの理念と実践を導入し,専門職者のDC教育プログラムを開発して,専門職者の資質向上を図り,新生児および早産児ケアの質を改善し,保障すること」を目的として正式に発足した. 2010年2月に第1回ディベロップメンタルケアセミナーが聖路加看護大学で開催され,同時に第1回NIDCAP認定コースがgretchen Lawhon(2012〜16年,NFI会長)を講師に招いて,4人の受講者を対象に墨東病院で行われた.同年に第2回および第3回ディベロップメンタルケアセミナーが日本赤十字看護大学および大阪医療福祉専門学校で開催されており,まさにそれはわが国におけるDCおよびNIDCAP元年であった. ディベロップメンタルケアセミナーは,毎回200人の定員が申し込み開始間もなくに締め切りとなる盛況で,2018年には第21回が行われており,新生児の臨床現場で働く看護師や理学療法士,さらに臨床心理士などのDCに対する熱い思いが表れている. さらに並行してNIDCAP認定コースも,gretchen Lawhonを講師に招聘して2施設(東京都立墨東病院および愛仁会高槻病院)をフィールドとして年1回行われ,2017年までに17名がNFIからNIDCAP Professionalと認定された.2017年にはフィールドとなる施設も7カ所と増え,近い将来に本テキストを使用して日本人による日本語でのNIDCAP認定コースが可能となると期待されている.おわりに DCの具体的な実践に重要な意味をもつNIDCAPが作られた経緯を解説し,さらに

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