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「新生児はミエリン化が未発達であるので痛みを感じない」という誤解から、長く、新生児の痛みには関心が払われてこなかった。しかし近年では、新生児は痛みを感じることができ、しかも下行性抑制系が未発達であるため、大人よりも痛みを強く、あるいは長く感じている可能性があると考えられるようになった。また、新生児期に頻繁に痛みを経験することによる長期的な影響も懸念されるようになった。このような背景にあって、新生児を痛みから護るためのケアが実践される必要があるとの認識から、2014年12月27日に「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン(以下、ガイドライン)」が完成した。本書は、まさに、このガイドラインを普及するための教材として誕生した。2015年から実施されている「ガイドライン講習会」はもちろんのこと、施設内外の新生児の痛みのケアに関する研修会などで、あるいは医療の教育現場で、広く使用していただくことを念頭に作成した。4章から成る構成で、第1章:痛みの生理学、第2章:新生児の痛み、第3章:新生児の痛みのケアガイドライン、第4章:ガイドライン実践のための技術(各施設の取り組み紹介)である。第1章および第2章は、NICUに入院している新生児の痛みのケアの重要性を生理学的側面から理解するためのものであり、ひいては、新生児を痛みから護るための理論的基盤となることを願ったものである。第3章は ガイドラインを説明するものであり、エビデンスの解説とともに、NICUにおける痛みのケアを向上させるための標準的取り組みが示されている。第4章では、各施設におけるガイドラインの実践を支えることができるよう、Q&A方式で、痛みのケアに先駆的に取り組んでいる施設の実際が紹介されている。具体的な方法のみならず、痛みのケアに対する考え方や姿勢が読み取れる内容である。ガイドラインは5年ごとに更新される。その5年間において、本書が、各施設における取り組みを支え、わが国の新生児の痛みのケアの向上と発展に貢献できることを願っている。 2016年3月はじめに横尾京子・田村正徳
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