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7 ディベロップメンタルケアとは、赤ちゃんを生まれてすぐからストレスの少ない環境で養育することが人間らしい高度な脳の働きを育み、温かい心と適切な発達、親子の関係性を養うという、未熟児医療の経験から生まれたものです。 出生の際、赤ちゃんは子宮内環境から自分で呼吸をしなければならない子宮外環境に一瞬の間で適応しなければならず、多くの医学的問題にさらされます。さらに人間は、寝返りさえできない生理的早産で生まれ、保温や栄養摂取という生きるための基本的なことも擁護者(母親)頼りです。人間の赤ちゃんがあおむけで寝るのは、目で母親を探し声や匂いがする方へと手を差し出すためです。 女性にとっても、出産は母親となる大きな出来事で、プロラクチンやオキシトシンなどホルモンの分泌により赤ちゃんを抱きしめて授乳を行うというmothering processが起こります。種々の事情でこれがスムーズに進まなければ、赤ちゃんへの愛情が湧かず、発育発達に悪影響を及ぼします。 出生(出産)後に母子関係が適切に構築されることは、母親の精神状態と児の発育・発達にきわめて重要です。これは母子相互作用とよばれ、母から子へ、子から母親へお互いの働きかけによって結ばれる絆です。母親からの絶対的愛情と信頼を心に刻みこむことが、ディベロップメンタルケアの要となります。【参考文献】仁志田博司.“母子関係と家族の支援”.新生児学入門.第4版.東京,医学書院,2012,105-27.母子相互作用とディベロップメンタルケア●早期からストレスの少ない環境で養育することが脳の高次機能を育むことが未熟児医療の経験から分かっています。●出生(出産)を経た母子が相互に働きかけあいを行う「母子相互作用」がディベロップメンタルケアの要です。キーメッセージ

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