4はじめにNICUでの看護は、“看護”なのだろうか。新生児への集中治療が展開される中で、患者さんの気持ちを直接言葉で聞けることはなく、学生時代の過酷な実習で培った看護実践力が通じず、無力感を持つこともあるかもしれません。カルペニートは看護診断において共同問題(collaborative problem)という考え方を提唱しました。共同問題とは、「看護師が発症や状態の変化を発見するためにモニタリング(継続観察)している生理学的問題のこと」であり、「その問題の発生を最小限にするために、医学的介入と看護介入を用いて共同問題に対処する」とされています。NICUでの看護は、まさに赤ちゃんの生理的問題の発生を最小限にすることが中心にあり、医師と協働し、多職種と連携することが求められています。近年では、FCC(family centered care)やDC(develop-mental care)といった看護的な取り組みも盛んですが、新生児の生理学と病態(正常と異常のプロセス)をしっかりと理解することなくしては、これらが本当の意味で赤ちゃんや家族への貢献となることはありません。新生児集中ケア認定看護師に求められる能力として「新生児の病態の急激な変化を予測し、重篤化を予防するとともに、生理学的安定を図ることができる」が筆頭に挙げられています。そして「看護師のクリニカルラダー:日本新生児看護学会版」にもあるように、新人からベテランまで、NICUにいる全ての看護師には赤ちゃんの状態の変化を最小限とするよう導く知恵が必要です。どんな疾患や病態にも「なりゆき」があります。回復の過程と悪化の過程を理解し、患児を受け持つ間に、この赤ちゃんにはどうなってほしいのか、またはどうなってほしくないのかを念頭に置いた観察とケアができるのがアセスメント力の高い看護師といえます。異常を認めるから報告するのではなく、どのようなプロセスを経てきた現状なのかを把握し、看護師としての懸念を説明できることが必要な能力です。報告後も、これから良くなるとしたらこうなっていく、悪くなるとしたらこういう症状が出る、と予測し、悪化が起こりそうになっていた
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