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15with NEO 別冊 るるNEO1章【総 論】 新生児の診断:より広い視野で児を捉える「胎内から胎外への適応」からみた新生児疾患「出生」というプロセスは非常にドラマティックです。一人ずつみんな違った物語が繰り広げられます。●児の生命活動の変化出生前後における児の生命活動の変化について、最初に考えてみましょう。母親の胎内では、必要な栄養素や酸素は、胎盤と臍帯を通じて母親から胎児に供給されます。さらに、胎児が産生した老廃物や二酸化炭素は胎盤を介して処理されます。胎児の生命維持や成長・発達は、母親に依存した状態といえるでしょう。「出生」に伴い、身体を維持するシステムが劇的に変化します。児は、生まれた瞬間に「胎内」から「胎外」への適応を迫られるために、自らの臓器や機能によって呼吸・循環・消化・排泄など、全ての生命活動を自分の力で行わなければなりません。何らかの原因で胎外環境へ適応障害を来した場合には、病的な症状が出現します(図1、2)。例えば、「新生児一過性多呼吸(transient tachypnea of the newborn;TTN)」を考えてみます。胎児は肺胞内が羊水で満たされており、肺呼吸は行われていませんが、出生に伴い肺胞内の羊水は吸収されます。ここで肺水の吸収遅延が起こると肺胞でのガス交換に障害を来すため、多呼吸や努力呼吸、経皮的動脈血酸素飽和度(percutaneous oxygen saturation;SpO2)低下などの呼吸症状が出現します。また、胎児は酸素を胎盤や臍帯から能動的に受け取っています。新生児仮死では、出生後に呼吸や循環動態が確立できず、自らの力で酸素を得ることができないため、低酸素状態に陥ってしまいます。動脈管が閉鎖しにくいという特徴はどうでしょう? 胎内では必要だった動脈管が、出生後閉鎖することなく開存したままでいると、体全体に十分な血液を送り届けることができないため、心不全症状が出現します。これに加えて、肺血流が増加するために呼吸症状も来すかもしれません。【総 論】 新生児の診断:より広い視野で児を捉える2

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