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胎児モニタリングの基礎知識第1章胎児心拍数モニタリングの有用性11 われていますが,脳性麻痺の発生頻度に変化はないと言われています4).これらの事実は,脳性麻痺の原因のうち,分娩中のイベントが原因と考えられるものがわずか10%程度であることからすると,当然の結果なのかもしれません.■胎児心拍数モニタリングの前方視的無作為抽出試験前方視的無作為抽出試験 前述の胎児心拍数モニタリングの有用性に関する前方視的無作為抽出試験について,Vintzileosらは9つのランダム化された報告についてメタ分析を行っています(表1)5).胎児心拍数モニタリングを行った群と間欠的胎児心拍数聴取(分娩第1期には15分ごと,分娩第2期には5分ごと)を行った群とを比較しました.その結果,胎児心拍数モニタリングで胎児管理を行うと,帝王切開率が1.53倍,吸引・鉗子分娩率が1.23倍となり,周産期死亡には差を認めませんが,低酸素血症が原因と考えられる周産期死亡は0.41倍に減少すると報告されています.さらに同様の報告を用いたThackerらの分析6)によると,胎児心拍数モニタリング施行群は,同様に帝王切開率の上昇を認めます(オッズ比1.44〈95%信頼区間condence interval;CI:1.24−1.66〉)が,1分後のApgarスコアが4点未満の頻度は変わらず(オッズ比0.89〈95%CI:0.70−1.12〉),新生児痙攣は減少(オッズ比0.50〈95%CI:0.31−0.80〉)するものの,NICU入院率(オッズ比1.00〈95%CI:0.91−1.10〉)や周産期死亡には差がない(オッズ比0.88〈95%CI:0.57−1.36〉)と報告されています. その後の間欠的胎児心拍数聴取法と胎児心拍数モニタリングの周産期予後症例数帝王切開胎児ジストレスによる帝王切開吸引・鉗子分娩鉗子分娩周産期死亡胎児低酸素血症による周産期死亡胎児心拍数モニタリング9,398484(5.2%)129/8,778(1.5%)1,147(12.2%)246/7,679(3.2%)40(4.2/1,000)7(0.7/1,000)間欠的胎児心拍数聴取9,163344(3.8%)47/8,506(0.6%)889(9.7%)96/7,403(1.3%)45(4.9/1,000)17(1.8/1,000)オッズ比(95%CI)1.53(1.17−2.01)2.55(1.81−3.53)1.23(1.02−1.49)2.50(1.97−3.18)0.41(0.17−0.98)CI(condence interval,信頼区間)表1 胎児心拍数モニタリングと間欠的胎児心拍数聴取の比較:メタ分析5)

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