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Part1急変対応のABC3備状況である.急変対応には多くの人手と,病態に応じた薬剤や輸血が必要になる.いつ発生するかわからない急変に対して24時間常に十全の準備をして治療完結することは不可能であり,患者の生命を守るためには安定化のための初期治療対応を行いつつ,早期に高次施設への搬送を決断しなければいけない.決断が遅れれば遅れるほど母児の生命は危険にさらされるため,決断はできるだけ早いほうがいい.受け入れる高次施設でも早期に搬送されれば重症化する前に治療介入することができ,より早期に安定化を図ることができる.そのためには搬送元は結果的に重症ではなかった場合のことを恐れずに早期に搬送の依頼をし,受け入れ施設は重症化が完成する前の早期に搬送を受け入れる,という共通認識を持つことが必要である.さらに搬送先の高次施設で状態安定すれば早期に搬送元に再度転送する,という協力関係が事前に築かれていれば,より安全な体制になる(図2). 高次施設の産婦人科病棟でも病棟内には産婦人科スタッフしかいない.急変発生時にはその場にいる産婦人科スタッフのみで初期対応を開始する必要があり,対応するスタッフの人数が少なく急変対応に慣れていない,という点では単科の産科医療施設と変わりはない.単科の産科医療施設との違いは院内に集中治療部門,救急部門,麻酔部門など,急変対応に熟練したスタッフがいることであり,急変を認知したら直ちに患者の生命を守るため安定化に向けた初期治療対応を行いつつ,ためらうことなく早期に応援を要請するべきである.産科急変に特有の病態もあるので,産婦人科スタッフとこれら急変対応にあたる部署のスタッフとが事前に病態についての知識を共有し,協力体制を築いておくことが望ましい. 産科医療施設から高次施設への搬送時には,ともすれば産婦人科スタッフ同士のみの連絡になりがちであるが,同時に高次施設内の急変対応に熟練した部署のスタッフとも搬送の情報を共有しておき,搬送早期から安定化治療についての協力を得ることが望ましい.図2 搬送の協力体制②入院長期化③満床受け入れ困難搬送判断の遅れ早期搬送の協力体制高次病院①搬送判断の遅れA医院B医院C医院②早期安定化高次病院①早期搬送③早期転院④常に受け 入れ可能A医院B医院C医院

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