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4図3 生命維持の基本細胞38ATP2 ATPミトコンドリア酸素ブドウ糖細胞酸素が届かない!38ATP2 ATP+乳酸ミトコンドリア酸素ブドウ糖酸性生命維持の基本 生命徴候の観察のために,まず生命維持の原則を再確認しておく.われわれの身体は細胞で構成されており,個々の細胞が機能を維持することで全身の生命が維持されている.細胞が活動するためにはATP(アデノシン3リン酸)が必要である.ATPは主にブドウ糖を原料として,酸素を用いた分解によって効率よくミトコンドリア内で生成されている(図3).酸素が十分にあればブドウ糖は最終的に水と二酸化炭素に分解され,全部で38個のATPが産生される.酸素がなくともATPを取り出すことは可能であるが非常に効率が悪く,分解の代謝物(ゴミ)として乳酸が蓄積され,結果的にアシドーシスが生じる.酸素が足りないために乳酸がたまっている状態を「酸素負債」といい,負債がたまりすぎると生命が維持できなくなる.生命を維持できたとしてもたまった負債を返すには時間と労力が必要であり,回復に時間を要する. つまりわれわれの細胞の活動は酸素が常に供給されることを前提に成り立っており,基本的な生命維持は臓器・組織の適切な酸素化によってなされていると理解すればよい.酸素化を維持するためには,①酸素が血中に取り込まれること,②血液が適切に循環して臓器・組織への灌流が適切に維持されていること,の2点が必須である. 生命維持のための司令は脳から出される.脳からの司令により胸郭の呼吸運動が起こる.気道(A:Airway)が開通していれば肺胞に新鮮な空気が達し,ガス交換(酸素の取り込み,二酸化炭素の排出)がなされる(B:Breathing).血中に取り込まれた酸素は赤血球内のヘモグロビンと結びつき,循環血液に乗って全身の臓器や組織に運ばれて細胞に受け渡される(C:Circulation).循環が保たれるためにはポンプとしての心臓機能,流れる血液量,血液の通り道である血管と,血圧を生み出すための末梢血管抵抗が適切に保たれていることが必要である.細胞内では酸素を用いた代謝が行われ,細胞活動に必要なATPが産生される.脳も臓器の一つであり,適切に酸素化された血液が適切に灌流することにより正常な活動が維持される.これ

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