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Part1急変対応のABC5図5 生命維持サイクルの破綻ACB脳の活動気道循環呼吸・換気脳の活動B障害ACB脳の活動気道循環呼吸・換気脳の活動A気道CC循環障害ACB脳の活動気道循環呼吸・換気脳の活動B障害図4 生命維持のサイクルACB脳の活動Airway気道Circulation循環Breathing呼吸・換気が最も単純化した生命維持のサイクルである(図4). このサイクルのどこかに大きな異常が生じると,サイクルは破綻して生命徴候が不安定になったり生命維持ができなくなったりする.例えば,A:気道が完全に閉塞していれば酸素が肺胞に達しないため酸素化できず,低酸素によって心臓や脳の活動も障害を受けてC:循環にも異常が出る.A:気道が正常に保たれていても,B:肺胞でのガス交換に異常があれば,やはり低酸素によってC:循環も脳の活動も障害を受ける.A:気道,B:呼吸が正常でもC:循環に異常があれば組織・臓器の灌流低下によって脳の機能が障害を受け,舌根沈下によってA:気道が障害されたりB:呼吸の指令が出なくなったりする(図5). このように,生命維持のサイクルはつながって一つの輪になっており,どこかで障害を受けると,次第に全体に影響が出て不安定になる.そのため,生命徴候が安定しているかどうかを判断するためには脳の活動+ABCの状態を観察して評価し,異常があればその異常を正常化すべく直ちに治療介入する必要がある.生命徴候の観察と評価は,診療のさまざまな段階でそれぞれ適切な方法を用いて繰り返し行う.なお,妊娠により呼吸機能や循環動態は影響を受けることは念頭に置いておく.呼吸は妊娠の進行に伴って胸式呼吸から腹式呼吸へと変化し,1回換気量は増加し,残気量や予備呼気量は減少する.呼吸数は妊娠末期にやや増加する.心拍数

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