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351 初版の発刊から6年が経ちました.私にとって,これは全国行脚に明け暮れたともいえる6年でした. 初版で京都プロトコールに沿った実技コースの受講をお勧めしたところ,各地からお声がかかりました.コースに参加された受講生のみなさまからさまざまなご意見を賜り,また貴重な体験談を教えていただきました.地方の,産科過疎といわれている地域の周産期医療を支えておられる方々の心意気とご苦労とを目のあたりにして,あらゆる地域で応用の効くプロトコールに,また実技コースにしたいという思いが強くなりました. 幸いなことに,母体の救命に特化した日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)が設立され,われわれも仲間に入れていただくことになりました.協議会には全身管理を得意とする多くの救急医と麻酔科医とが参画し,救命のための知識の提供およびスキルの指導を担ってくれています. われわれ産婦人科医は緊急事態に遭遇したとき,ややもすれば骨盤内の処置に集中し全身管理に気が回らなくなることがあります.母体の急変時には,まだ確定診断がついていない段階で局所への対応と全身管理とを同時に進めなければ,躊躇している間にも容態が一気に悪化します.このようなとき,急変の第一発見者がBLSを忠実に遂行できれば,最悪の結果を回避できることがあります. この第3版では,第2版の刊行から2年間の母体死亡症例の傾向を考慮してシナリオの本数を増やし,全体にわたり加筆修正を行いました.とくに死亡例や重症例が増加している劇症型A群溶連菌感染症についてはシナリオを追加し,敗血症の解説も加筆しました.昨今はさまざまな感染症が猛威を振るっています.このテキストが妊産婦の感染症の重篤化を防いでくれれば幸いです.このように第2版からさらにページ数も増え,さらに密度の濃い内容になっています. これからも実技コースに参加される受講者のご意見と,わが国の母体死亡症例の検討とを盛り込むことで,さらに実践的なテキストを目指したいと思います.そのためにも多くの方々にコースを受講してもらい,感想や意見をいただくことが必要です.これからもJ-CIMELSは全国で実技コースを開催していく予定です.みなさまの受講をお待ちしています. 2020年3月日本母体救命システム普及協議会橋井 康二おわりに

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