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vii 第2版では2017年に変更になった日本蘇生協議会の蘇生ガイドライン2015で変更された点を加味して最新の内容に書き換え,またコース開催のたびに受講生からいただくご意見,受講生が陥りやすいピットフォールへの警鐘を反映させました.周産期(産褥)心筋症と,てんかんのシナリオを追加したことに加え,適切な対応をとった場合とそうでない場合との差異を実感していただくためのページを設けました.さらにこのたびの第3版では,第2版の刊行から2年間の母体死亡症例の傾向を考慮して,A群溶連菌感染による敗血症,局所麻酔薬中毒,全脊麻について学ぶためのシナリオを増やし,全体にわたり加筆修正を行っています. 施設の規模に関係なく,周産期医療に携わる全員が母体急変の第一発見者になるリスクを負っています.このときの妊産褥婦の予後は,第一発見者の対応次第だといえます.その対応とは,まずBLS(Basic Life Support)を忠実に実行することです.母体の特殊性を加味したBLSをこのテキストで学び,実技コースを受けることで,いつでも使える技術として習得してください. 救急医や麻酔科医にとって,母体は治療対象の中のほんの数%を占めるに過ぎません.それでも母体急変の治療成績の向上のため,J-CIMELSの活動に多大な時間を費やしてくれています.J-CIMELSは彼ら救急医との連携により,われわれが正しい蘇生法を学ぶことのできる機会を提供しています.このシステムを有効に利用していただき,周産期医療に携わるスタッフ全員が自信を持って急変に立ち向かうことが,母体の救命率の向上につながると確信しています.今後も妊産婦死亡症例検討評価委員会の「母体安全への提言」の内容を盛り込みながら,本書と実技コースの改訂を繰り返していく所存です.ぜひ,本テキストを読んでいただき,実技コースで体を動かし,一緒に一歩前進しましょう. 2020年3月京都産婦人科救急診療研究会幹事 J-CIMELS幹事 ハシイ産婦人科院長 橋井 康二 

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