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19ペリネとはなにか?第章1背骨を伸ばした状態で背中を丸めたり反らせたりする動き、呼吸、臀筋と内転筋などをそこに組み込みながら、自らのペリネを収縮させたり弛緩させたりする術を見出していく姿です。ビデオの中で、分娩時のいきみ方の準備として、風船を膨らませることでブレーキをかけながら息を吐く方法について指導をしています。この前衛的映像には、その後に私が発展させていったアプローチの全要素が含まれています。大変な粘り強さと引き換えに、従来の知識の流れに逆らい何年も闘い続けた末に、出産やスポーツ実践、ペリネのリハビリに関して私が結論づけたり推奨したりした事柄は有効であると認めてもらうことができました。ビデオ映像の内容はショッキングなのものではありません。ただ、出産準備のために自らの身体を発見していくこの若い女性を前に、多くの人が戸惑いを感じたようです。リアルな光景よりも、描かれた解剖図のほうがはるかに受け入れやすいということなのでしょう。これは、部分的にしろ「おしっこ・ウンチ」に関するものはすべて不潔なものだと捉える教育にも原因があります。私たちは小さな子どもたちが身体のこの部分を探索することに耐えられず、「恥部」の筋肉に触れる「自慰」行為と同一視します(恥部という名称はこの部分に命令を下す神経の名称「恥部神経」に由来。日本語では陰部神経)。現代の社会では、尿や便をこらえる機能に価値が置かれ、それができた子どもはものすごく褒められます。オムツが外れて初めて「大きい子」の仲間入りというわけです。同じような例で、フランス語の「se lâcher」という表現は、社会的にみて特別にコントロールすべきところで態度を緩めることを指しています。こうして自制をしいることを習得したあとで、もっと繊細な機能、性的行動で「緩める」ことを求められるわけですから、話はそう簡単にはいきません。今日、ペリネ以外のあらゆる筋肉のトレーニングは、丈夫で健康な身体維持のために大いに奨励されているのに、産後や術後あるいは尿失禁に関わるペリネのリハビリのようにペリネの筋肉の訓練や筋力維持には必ず医学的な論拠が求めらます。身体のこの部分のごく単純な言及が、身体や精神やカップルのバランスにとってごく当たり前の本質的機能として捉えられることはなく、ペリネのこととなると一事が万事、性行動としてひとくくりにされ、ポルノの世界に追放されるのが落ちです。つまり、身体のこの部分のもつ類いまれな豊かさが正当に評価されていないのです。全身どこを探しても、ペリネほど巧みな生命維持機能の反応を示す部分は他にありません! 最も、古代ギリシャのインスピレーションを受け継いだ表現はもっと詩的で、身体のこの部分をPeri naos訳注2)、つまり「神殿の周囲・最も重要な物の周囲」と定義づけ、半分見え隠れする、とりわけ女性の「内面」でもあるこの部分に神聖さを授けています。訳注2) peri naos:ギリシャ神殿内には石造りの壁に囲まれた長方形の内陣(Naos)が設けられ、そこに神像が安置されていました。

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