2401CaseCase診断までの流れ 妊婦が下腹部痛を訴えた場合、切迫早産や陣痛発来による子宮収縮の痛みなのか、常位胎盤早期剝離による子宮の硬直なのかの鑑別は難しい。切迫早産や陣痛であれば、規則的あるいは不規則な子宮の収縮であるため、必ず間欠期が存在する。一方、常位胎盤早期剝離であれば持続的な硬直となることが多い。しかし、両者の鑑別を電話で行うのは経験豊富な医師でも難しい。切迫早産が抑制できない状況や分娩が急速に進行した症例の中には、分娩後に胎盤の娩出とともに血腫が排出され、初めて早剝だったことに気付く「不顕性」の状況も存在する。そのため、来院を促し診察を行うことが望ましい。継続的な痛みやうずくまるような状況であれば最悪の状況を想定し、救急車での来院を促すことも必要である。■■■検査の進め方■■■ 夜間など、呼び出しのため医師がすぐに診察できない状況であれば、まずは分娩監視装置を装着する。子宮収縮の状況と胎児心拍数モニタリングによる胎児監視を行い、児のwell-beingを確認する(第5章㊺ p.190参照)。この際、妊婦の腹部を触診し、いわゆる「板状硬」になっていないかを確かめる。持続して子宮が硬い場合や間欠期も硬い場合は、早剝の可能性がある。 早剝の場合、CTGにて数分間隔の規則的な子宮収縮ではなく、いわゆる「さざ波様」の持続的な収縮パターンとなることも多い。胎児心拍は異常波形となる場合もあるが、早期であれば正常波形であるため、異常がないからといって安心はできない。 34歳の初妊婦。身長158cm、体重49kg(非妊時)。妊娠初期より自院で妊婦健診を行っていたが、特に著変を認めなかった。妊娠32週時に規則的な子宮収縮を自覚し受診した。子宮頸管の開大は認めなかったがCTGにて子宮収縮を規則的に認めたため、リトドリン塩酸塩錠が処方された。自宅安静と内服で落ち着くようであれば2週間後に受診するように指示された。 妊娠33週4日、突然下腹部痛を自覚するようになった。しばらく休んでいたが痛みが継続し、次第に我慢ができなくなってきた。性器出血も少量認めた。2週間前に処方されたリトドリン塩酸塩錠は夕食後、ちょうど1時間前に服用したばかりだった。本日は休日でこのまま様子を見るべきか、受診すべきか心配になり、かかりつけの産婦人科に電話連絡した。事 例切迫早産様症状が認められる
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