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241てくれるはずです。医療チームの皆さんも、ぜひ身体を動かして産婦の身体の動きを追体験してみてください。そうすれば、もっと深い部分で妊婦や産婦に共感できるでしょう。ガスケアプローチの目指すもの ド・ガスケ医師は、「産婦自身が身体の声に耳を澄まし、身体の求める姿勢をとることのできる手段を与えられさえすれば、産婦はそれぞれの場面や進行に最もふさわしい姿勢を本能的に見つけ出していく」のだと言い、まず背骨を伸ばして身体の緊張を解き、いちばんよく呼吸のできる姿勢をとるように産婦を促します。そこで目指しているのは、バイオメカニクスを尊重した生理的分娩の実現です。 一般的に、自然分娩の分娩機序は、産婦が婦人科体位でお産をすることを前提とした理論です。そこでは、胎児が頸けい部ぶを屈曲させる第一回旋から始まり、児頭が骨盤内に進入してその中を下降した後、恥骨を支持点に上昇軌道をたどり、その間に頭を回旋させたり反屈させたりしながら母体前方に向かって胎児が娩出されると書かれています。 これについて、ド・ガスケ医師は、このような分娩機序をとる理由は、仰ぎょう臥が位いという姿勢によって仙骨の動きが阻害された状態であることに起因すると指摘しています。それに対して、側臥位や四つんばいなど骨盤の動きが解放された姿勢でお産をした場合、事情はまったく異なるのだといいます。つまり、頸部を屈曲させて卵のような姿勢を維持したまま、胎児は頭を回旋させたり反屈させたりすることなく、母体骨盤内を「臍へそ─尾び骨こつ」軸に沿って後方に向かって一直線に娩出されるというのです。胎児が最小限の抵抗のなかを前進し、母体の諸臓器は本来あるべき位置にとどまった状態で、型から抜くように胎児だけが娩出されるのが、自然によって計画された生理的分娩の見取り図なのだと説明しています。もしそれが、尿失禁や骨盤臓器脱など女性の骨盤底機能不全症の予防につながるのなら、それを試してみる価値はあるのではないでしょうか。

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