242現代医療との併用が可能な科学的なアプローチ ド・ガスケ医師は本書の中で、産婦の多様な振る舞いの意味するところを、確信を持って解説しています。その根拠となっているのは、生理的分娩に関するド・ガスケ医師の30年以上にわたる地道な研究の成果です。 1990年代から2000年代にかけて、ド・ガスケ医師は、出産する女性や現場の助産師、産科医、助産師を目指す学生などの協力を得て、分娩中の産婦の行動を含めた詳細な分娩観察記録と、ビデオ撮影による出産の映像記録をとり、分娩後にそれらを分析することで、分娩進行中の産婦の行動の意味を検証していくという作業を重ねました。 また、姿勢の違いや大だい腿たい骨こつの内ない旋せん位い、外がい旋せん位いの違いが坐ざ骨こつ棘きょく間の開大にどのように影響するのかを調べるために、自ら被験者になってX線撮影画像やCTスキャンで確認するということもしています。ただ、残念なのは、当時のフランスには実践重視の風潮があり、そうした貴重な研究が学術誌に発表されなかったことです。 分娩が命がけの試練であることは、妊産婦死亡率が大幅に減少した今でも変わることのない事実です。それでも、お産に携わる医療チームが、母児の快適さを犠牲にして医学的管理だけを重視するのではなく、少しだけ立ち位置を変えて、本書を援助のためのツールとして活用することで産婦がその生理的機能を最大限に発揮できるようなサポートを行い、万が一、生理から逸脱してしまった場合には、即座に必要な医学的介入を行うという柔軟な対応ができれば、母児に対して、医療に守られた環境で安全かつ快適な質の高い出産を提供できるのではないでしょうか。日本でもガスケアプローチを活用したお産が可能に! 日本で初めてガスケアプローチ研修会が開催されてから12年が経ちました。今では、日本ガスケアプローチ協会注)が中心となってガスケアプローチアドバイザーの育成や普及活動を行っており、周産期ケ
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