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24救急医の頭の中は? 救急医は、救急隊からの連絡を聞きながら秒単位で鑑別疾患を考え、治療方針を考え、受け入れの判断をしていきます。この判断が可能なのは、年齢、性別、主訴、バイタルサインを聞けば、瞬時に鑑別疾患の見当がつくからです。同時に、救急医は常に見逃してはいけない疾患(致死的な疾患、緊急に治療介入が必要な疾患)を想定しています。 救急医は、看護師からの電話で、年齢、性別、主訴を聞き、救急外来に向かって移動しながら「この患者で最悪のシナリオは? そのときの対処法は?」と考えます。日常生活でも、駅のホームで押し出されて落ちないかと後ろを振り返ったり、街を歩いていても、今大地震が起こったら目の前の巨大クレーンはどの方向に倒れるのだろうと考え、小走りになったりしてしまいます。常に最悪を考えてしまうのは、救急医の職業病なのかもしれません。常に最悪の事態を想定していれば、急変に直面しても「ああ、想定しておいてよかった!」と救われた思いがします。安心のための思考法でもあり、怖がりの人ほど救急の医療者に向いていると言えるのです。 日々急変対応の場で働く救急医は、短時間で診断に至るように思考が訓練され、救急の臨床推論が自然に身に付いていきます。しかし普段は、自分の思考過程を意識しないことが多く、このような瞬時の思考過程を言語化することは難しいことでもありました。しかそのとおりです! では次に、救急医が臨床の場面でどのように動いているかをお伝えしましょう。危ない情報が、レッドフラッグなんですね。この症例では、「突然発症」「呼吸困難」「胸痛」「冷汗」がまず確認すべきレッドフラッグということですね。

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