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2 産科領域における緊急時の対応では、スピードが求められます。それは、母体と胎児の2つの命を守るからに他なりません。 母体死亡の原因で最も多いのが、産科危機的出血、次いで脳出血・脳梗塞、心肺虚血型羊水塞栓と続きます。妊産婦の最も身近にいる助産師は、妊産婦をどのように観察しているでしょうか。また、観察した事項はどのように活かされているでしょうか。緊急時に対応できるように、そして瞬時の判断に基づく対応ができるように臨床経験を積み、学びを深めていくことは、大変重要です。 我が国の母体死亡の状況を改善するべく、日本母体救命システム普及協議会(Japan Council for Implementation of Maternal Emergency Life-Saving System;J-CIMELS)1)が導入されました。J-CIMELS受講者は、妊産婦の変化を見逃すことなく、緊急時の臨床推論が求められることを、本コースで学んでいます。 臨床の経験知を共有するのみならず、主訴から見逃してはならない観察された事項を的確に評価し、診断に至るのが臨床推論です。このような臨床推論を身につけていくには、どのような方法があるでしょうか。やみくもに知識や技術を身につけるのではなく、体系的に学ぶ方法があります。それが、本書で提案されている「レッドフラッグ」、すなわち急変時に確認すべき観察項目です。見逃してはならない症状など、短時間で診断に至るように、思考訓練に活用できるのが、本書です。また、鑑別診断一つずつ覚えるのではなく、緊急度と重症度に対応した二次元鑑別シートを用いることによって、見落としがちな疾患を想起することができるように体系化されています。 本書の目標は、「急変を見抜く力を身につける」ことです。急変を見抜く力によって、緊急時に臨床推論しながら同時に治療に結び付けることを可能にしてくれます。推薦の言葉

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