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 『精神科看護の知識と実際』の第2版をここにお届けいたします. 初版の出版から6年が経過しました.この6年で変わった部分は,新しい診断基準DSM-5の出版など,専門用語の大きな変化です.精神科の臨床現場では看護師・医師などの多職種,そして当事者・家族などさまざまな立場の人がよい連携をとっていくことが大切です.そのためには,基本的な概念や言葉を共有していなければなりません.それに加えて,精神科臨床現場で仕事をする者にとっては欠かせない法律である「精神保健福祉法」が改正されました.このタイミングで第2版を出版する大きな理由は,初学者の皆さんには,初めから新しい用語で精神科看護を学べるように,臨床経験の長い皆さんには,最近の概念の変化,法律の変化を理解してもらえるように,との編者らの思いからです. 一方で,精神科看護・医学には,この6年間で変わっていない部分もあります.むしろ,変わっていない部分のほうがずっと多いと言えるでしょう.精神科の臨床経験を培うには,患者さんに寄り添ってその言葉を聴くというゆっくりとした時間の流れ,そして,自殺が切迫した状況など速やかな判断が求められる場面での速い時間の流れ,この両者の時間の感覚を身体で覚えていくことが大切です.こうした身体で覚える知識の部分は,10年に満たないような短い期間で変わっていくものではなく,先輩から後輩へと連綿と受け継がれていく精神科医療・看護の知でありアートです. そういう意味で,第2版の章立ては,初版と基本的には変えず,ただし,重要な用語変更には各章の中で対応いただく,という方針を採りました.ですので,この第2版は初学者の皆さんはもちろんのこと,初版に馴染んでいただいた方にとっても使い勝手のよいものとなっているのではと考えています.講義などですでに初版を利用いただいていた教育機関の皆様にとっても,第2版にスムーズに移行いただけるでしょう. この教科書で学ばれた皆さんが,将来,精神科看護というやりがいのある仕事に就いて,援助を必要とする患者さん方の支えとなっていかれることを切に願います. 2015年6月京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座精神医学教授村井俊哉

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